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【ポリフィルス狂恋夢】覚書〜洋書レビュー再読(2回目)

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テキスト

前回同様アマゾンで安く買ったThames and Hudsonの英語版。何分分厚くかつ内容がたとえ邦訳でもわからないような中身であるゆえ、1回目はかなり乱雑に読み切った。いや読んだというより見たと言った方が早い。前回記事→https://saitoutakayuki.com/syousetsu/hyupuero/

実際ところどころ絵が入ってるし、印刷が凝っていて意味不明なイタリア語で出版された実物の忠実な再現を試みているから、眺めているだけでも楽しい本である。だが絵については実物のファクシミリか何かを写真で撮って、鉛筆でなぞったような、漫画のような具合で、本物の絵の線の繊細さが失われてしまってるのは残念だ。

Thames and Hudsonの本はそのような出来なのだが、ひどい絵を紛らすために、今回は塗り絵で楽しみながら読んだ。色鉛筆で下手くそな複製の絵をなぞると、意外と細かい点が目に付いてテキストの理解を助ける。

Thames and Hudsonには序文も付いてるが巻末に注釈もある。ギリシャ語・ラテン語本文の翻訳や女神・地名の翻訳、作者固有の建築用語の解釈、そして記述だけではややこしくてわかりにくいウェヌスの島の概略図である。なかなかお買い得な本と言える。

あらすじ

では1回目ではほぼ意味がわからなかったあらすじを整理したい。ポリフィリオはポリアに激しく恋している。今では珍しい自殺や殺人にまで発展するような、事件になってしまうような恋である。

ハムレットの苦悩やロミオとジュリエットの情死を思い出してもらいたい。ポリフィリオは満たされぬ恋に死なんばかりになって野に横たわる。眠れぬ夜を過ごしそれでも明け方涙を流しながら夢を見る。ここから話が始まる。

大雑把な感じでは、彼は暗い茨の林の中を逃げ回る。水を求めてうろつきながらやがて古代の遺跡にたどり着く。そこでオベリスクやピラミッドのような巨大建築を見る。そこには巨大な横たわる人間の像や、中に入れるくらい大きい象もある。彼はそれらを探検する。

すっかり魅了され神殿に入ってみると突然ドラゴンに追いかけられる。夢中で逃げるうち何とか外に出る。呆然とするうちニンフの群が彼を見つける。ここから物語に色気が出始める。他のキャラクターが現れたからである。

冒険

裸のニンフと水浴びをしたり遊んだりし、彼は欲情する。この物語は露骨なエロス描写が多い。しかし全体で知的な雰囲気が充満しているために、まったくいやらしい感じを与えない。この本は、エロスという神とその母親であるアフロディーテを讃えるものなのである。

興奮が収まるとニンフたちは彼を女王の元へ連れて行く。女王は彼の悩みを聞き2人の案内役を付けて冒険に送り出す。2人のニンフは彼を3つのドアのところへ導き、どこに入るか選ばせる。

一番華やかな、楽しそうな見かけのドアに入ると、連れがみんな消え去ってしまう。騙されたかなと考える彼の前に若者の一団とそこからやってくる一人の乙女を見る。

ポリアに似ているような気のする乙女に彼は案内されながら、キューピッドと共に円形のウェヌスの島に旅立つ。乙女はポリアその人である旨が明かされる。ウェヌスの島の中心で二人は結び付き、固い絆で結ばれる。

第二部

第二部ではポリアとポリフィリオが代わる代わる自分の体験を話す。これは第一部の続きであるが、前か後から加えられたように見える。従ってまったく独立した別個の物語として見た方が良い。

ポリアはポリフィリオから熱烈なストーカー行為を受けていたが、伝染病にかかり治るために貞潔の女神ディアナ(アルテミス)に誓いを立てる。治癒した彼女は巫女になってしまうので、ポリフィリオは無視される。

偶然神殿で彼女を見つけ、2日続けてストーカーするが拒絶され、彼は衰弱で死ぬ。彼女はびっくりし死体を影に隠す。しかしその帰り道に悪魔にさらわれ2人の乙女が鞭打たれ切り刻まれ獣に食われる有様を目撃する。気がつくと元の場所にいたが家に帰ってからも夢の中に悪魔が現れる。

悪魔と書いたが怒り狂ったエロスが変化した化け物である。目を冷まし乳母に泣き付き、恋人を死なせた報いだからウェヌスの神殿で懺悔するように進められる。

悔悛

まず彼の死体に謝罪し涙を流しにアルテミス神殿へ行く。白いおっぱいを彼に見せ抱きしめキスすると彼は生き返る。場所も憚らずペッティングを始めると喘ぎ声を聞きつけて貞潔の女神の巫女たちが怒って襲ってくる。

うまく何とか逃げ果せ二人はウェヌス神殿へ行く。彼女が悔い改めて恋の情熱に背き彼を死なせたことを謝罪する。大司祭は彼らを許し硬く結び合せる。彼女の話はここまでで、今度はポリフィリオが話す。

すなわち激しい恋に落ちた彼は彼女に3回手紙を書くが全部無視され、見かけた時も無視される。神殿で偶然会ったが何を訴えても彼女は鉄のように冷たい。息絶えると魂は店でウェヌスと息子のクピドーの前に行き、不平を訴える。クピドは母親に窘められポリアの像を矢で打つ。

生き返ったポリフィルスはポリアの胸に抱かれている。二人は相思相愛になった。めでたしめでたし、二人が語り終えると周りのニンフたちはそれぞれ出かけていった。恋人二人はウェヌスの泉の近くで果てしないねっとりとしたキスをし、蛇のように絡み合って抱き合う。ここで夢から冷める。

終わり

辛いことも大団円も、恋人と結ばれた喜びもすべて夢だった。さようなら、ポリフィリオ、さようなら、ポリア。これは作者の愛する一人の女性への、全身全霊の愛の結晶であろう。人の仕事とは知識と芸術である(Art and Science)。とはウィリアム・ブレイクの言葉だったと思う。

この本には多くの謎がある。仕掛けもある。たくさんの象徴もある。百科事典的な語彙集でもある。2回目もよくはわからなかった。でも、読まないよりはましだ。

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