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【Corpus Hermeticum】Tarl Warwick版・洋書レビューと解説

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以下はkindle版アマゾン・リンク⬇️

価格は200円以下、ペーパーバックだと千円くらいのこの本は、ヘルメス文書を読むには実にクォリティの低い仕上がり。一般大衆向けに軽薄な語彙を多様して翻訳された形体は、真剣に学問哲学を探求しようとする読者には物足りないであろう。

この人は実にたくさんの、多すぎるほどの本を出し、多くのメディアに露出し、怪しげな小説まで書いているようである。まずwikiで調べて、次にアマゾン等で売っている本を探してみると良い。写真もとてもヘルメス文書を論ずるようなルックスではない。

どちらかといえばオカルティストの印象であり、この人がCorpus Hermeticumを扱ったのも魔術や錬金術オタクの趣味の一貫としてではないか、そう感じた。とにかく訳がひどい。みっともない。なぜこれを買ったのかはアマゾンで洋書を書い始めたてで、出版社選びにまだ通じていなかったから。それと荒井献の『ヘルメス文書』が高すぎるためだ。

やはりこれを読みたいならBarbaroi!なる偉大で高貴なサイトで読むのが良い。こちらの邦訳は原点の格式高さを失うどころか、日本語の美点を生かし、内容にふさわしいとても奥深い訳となっている。以下リンクhttp://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/hermetica/ch_index.html

内容

ではひどい文体のことを忘れて内容に移ろう。『ヘルメス文書』のことは今まで何度も書いてきた。しかし最近の筆者の頭の構造はそれらの記事を書いた頃の前とは大分変化している。なのでここに改めて書こうと思った次第である。

まず、神と日本語で書くその存在を、人が認識することを「覚知」と呼ぶ。覚知はあらゆる学問のスタート地点であり、人の生きる道の最初である。だからヘルメス文書は覚知を教えるが、本が目的とする覚知は最終目標とは違い、哲学者としての最低条件なのである。

いかなる宗教も覚知なくして始まることはない。覚知は人間の基本であるから、死ぬ前に必ず到達しなければならない。でないとなぜ自分が生まれたのか、生きているのか、なぜこの宇宙があるのか、なぜ人間はこの形をしているのかetc.の疑問を抱えたまま、確信を得ることなく滅んでしまう。

そのためにはあるがままのものを、あるがままに感覚する、それだけで良い。ヘルメスは人間が魂と体に分かれていると教える。しかしこの意見は、昔は私も盲目的に賛同していたが事実と異なる。その点、W・ブレイクに賛成するものである。

気付いた点

まずこれらの文書の作者、または作者たちは自分が何事かを知ったつもりになっている。だから世界の構成を説くのである。だが現代人の私から見てもことごとく彼らの世界像が時として間違っているのに気付く。その理由は、この文書が成立したとされるアレクサンドリアという場所そして時代、それからアリストテレスとプラトンの本のせいである。

プラトンの深遠な議論、『国家』や『ティマイオス』がどれだけこの人々に崇拝されていたか、さらにアリストテレスなどは、ルネサンスの大学で学ばれた頃は、アリストテレスを読みさえすれば宇宙を解明したと思われていたくらいだ。ましてや本家本元のアレクサンドリアで学者気取りのエリートが、7つの天界と第8の恒星天の上に神がいると考えたのも無理はない。

「世界はこういうものだ」という固定観念が彼らの落とし穴になった。言うまでもなくアリストテレスもプラトンも間違っている。現代人である我々が最も史上宇宙の真相に接近したのである。だが、謎は全然解明されてはいない。

この本は覚知の第一段階に立つために、まだ無知の暗闇で反吐を吐き自分の汚物の中でもがいている人々を救うために書かれた。私も彼らに手を握られて、糞の沼から顔を出したのだ。それは「ポイマンドレース」にある通り

”ある時、私の思考が甚だ高まり。。。(略)途方もなく巨大なある者が、私を呼んでいるように思われた。”

まとめ

存在はなぜ存在するのか。この有るものとは何だ?なぜ作られた形はそのように作られ、あらゆる働きはそのような働きをするのか?現実とは何だ?非現実とは何だ?すなわち、起こるべくして起こることと、起こり得ざるものとしての起こり得ざるものらとは?

もう答えは出ている。これらを「全て」と、英語ではAllと呼ぶ。All Things。全ては神から出ている。起こること起こらないこと、作られるもの作られないもの、働くもの働かないもの、運動するものしないもの、エネルギーと非エネルギー。何もかも、有るものもないものも全て神である。

「ある」ということ、これが神である。ここから学問も芸術も始まるのである。

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