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【エドガー・アラン・ポー】短編「タール博士とフェザー教授の療法」〜精神病者たちの反乱

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エドガー・アラン・ポーの短編「タール博士とフェザー教授の療法」の紹介。

鎮静療法

映画「シャッター・アイランド」を思わせるとある精神病院を舞台にした話。

主人公はフランスを旅しながら精神病院”メゾン・ド・サンテ”の近くを通りかかった。旅の道ずれの紳士に一緒に見学に行こうと持ちかけたが、紳士は御免だと断った。その代わりにその病院の院長を知っているから、門口まで同行して紹介の労を執ってやろうと言ってくれた。

それきりその紳士とは別れてしまった。”メゾン・ド・サンテ”は「鎮静療法」という新しい精神病の治療法を実践していることで知られた。つまり凶暴な患者の脳にドリルで穴を開けてゾンビ化する”ロボトミー”や、両手両足はたまた口に猿轡まで噛ませて拘束したり

独房に閉じ込めて一切の外的環境から隔離したりといった、昔ながらの荒っぽい治療ではなかった。つまり精神病者たちを院内を好き勝手に歩き回らせたり、それぞれの妄想を抑制することなく反対に助長してやったり、お互いに官吏の役目を負わせて見張ったりしていたという。

ひよこ

映画「シャッター・アイランド」ではFBI捜査官だと思い込んでいるディカプリオを、周りの役者たちが手助けして、自分で自分の妄想の矛盾に気付くまで好きに泳がせる。同じく”メゾン・ド・サンテ”では自分を「ひよこ」だと思っている患者には穀物ばかりを与え、茶瓶だと思っている者には好きに身体を磨かせておくのだった。

さあ主人公が招かれたのはこのような精神病院だった。施設見学の前に食事をということになり、院長と監視たちのもてなしを受ける。誠に風変わりな連中でもしかしたら彼らは鎮静療法を受けている患者さんたちそのものではないか、との疑いが起こった。

しかし院長はその考えを否定し、患者たちは今はもう一層新しい治療法で遇されていると語った。「鎮静療法」ではなくタール博士とフェザー教授の考案した昔ながらの方法であった。院長の話では最近の事件だが鎮静療法を受けていた患者一団が一揆を起こしたことを受けての措置だという。

反乱

やがてものすごい勢いでドアを叩き、叫び声をあげる集団が集まってきた。食堂にいた彼らはうろたえた。きっと患者が閉じ込められていた牢屋から脱出して暴れたに違いない!狂人たちがドアを破って中になだれ込んできた。

今まで一緒に食事していた人々は鳥の鳴き声を上げたり、ひよこの真似をしたり、コマのようにくるくる回って敵をなぎ倒したりした。修羅場だった。主人公は気を失った。

気狂いたち

あとで聞いた話だが、”メゾン・ド・サンテ”のこの院長は数年前に発狂して患者の仲間入りをしていた。紹介の紳士はその事実まで知らなかったのだ。主人公が食事したのは紛れもない狂人たちとであって、病院の職員は少し前に反乱を起こした患者たちによって閉じ込められていたのだ。

やっと一人だけが下水道から抜け出した仲間たちを助け出し、事が明るみに出ることになったのだった。まさしく「普通」とはどこまでが普通であり、「狂人」とはどこからが狂人なのかわからないだろうといった疑問を投げかける一編である。

なお事件後主人公は必死になってタール博士とフェザー教授の書物を探したがどこにも見つからなかったそうである。

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