2020-10

疑似学術地帯

柿本人麻呂「ひむがしの野にかげろひの…」を読む|万葉和歌に宿る古代日本の宇宙観

【万葉集の宇宙観】柿本人麻呂「ひむがしの 野にかげろひの…」の空間詩学と文明認識1. はじめに──記憶の底に棲む和歌高校教育を通じて、日本人の多くはある和歌を知らぬうちに記憶している。ひむがしの 野にかげろひの 立つ見えてかへり見すれば 月...
疑似学術地帯

 清少納言『枕草子』第九段を読む|翁丸の島流しと宮廷社会における動物・秩序・赦免

【清少納言『枕草子』第九段】命婦のおとどと翁丸──平安貴族社会における動物・流罪・感情の制度化1. はじめに──「いとをかし」の倫理『枕草子』第九段に描かれる、猫と犬をめぐる一連の出来事は、現代の読者にとって非常に奇妙な読後感をもたらす。そ...
疑似学術地帯

 『枕草子』第八段を読む|中宮定子と清少納言の知と笑いが織りなす宮廷文化

【枕草子 第八段】大進生昌の邸にて|清少納言と中宮定子の〈知〉と〈笑い〉の宮廷文化1. はじめに──「枕草子」第八段の位置づけ『枕草子』第八段に収められたのは、清少納言が仕える中宮定子(藤原定子)とともに、大進・平生昌(だいじん・たいらのな...
小説の闘牛場

【夏目漱石】『吾輩は猫である』感想・レビュー|無常観とユーモアの知的な共存

1. 作品概要|作家になろうとしなかった天才あらためて夏目漱石を読み返すと、その作品の深さと洒脱さに驚かされる。以前「漱石は偉くなろうとしなかった唯一の作家」と自分でも書いたことがあるが、その印象はいまだに揺るがない。たとえば、弟子の芥川龍...
小説の闘牛場

芥川龍之介『羅生門・鼻・芋粥』レビュー|教訓と空虚の交差点

【芥川龍之介】『羅生門・鼻・芋粥』感想文|感想のみ、大人向けレビュー『羅生門』──“悪”と“無常”の演出日本文学を改めて読み返している中で、芥川龍之介の代表的短編集『羅生門・鼻・芋粥』(角川文庫)を手に取った。まずは『羅生門』から。高校の教...
小説の闘牛場

芥川龍之介『偸盗』感想・レビュー|盗賊と女の裏切り劇、月下のアクション

【芥川龍之介】『偸盗』感想・レビュー|迫真、大正時代のアクション小説!概要“アクション小説”と聞いて芥川龍之介を思い浮かべる人は少ないかもしれない。だがこの『偸盗(ちゅうとう)』には、まぎれもなくその要素がある。解説や学者の論評はひとまず脇...
小説の闘牛場

芥川龍之介『地獄変』レビュー|美と狂気が交差する芸術地獄

【芥川龍之介】『地獄変』感想・レビュー|芸術のために我が子を焼き殺す絵師概要芥川龍之介の『地獄変』は、鎌倉時代の説話集『宇治拾遺物語』を題材としている。芥川がよく素材にする『今昔物語集』よりやや後の時代の作品だが、いずれも古語辞典がなければ...
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 『菅原道真』(王丸勇 著)レビュー|天神信仰と詩文にふれる知的入門書

【菅原道真】王丸勇・著|神と知のあわいに生きた詩人政治家を読むための入門書1. 書誌と著者──昭和的良書としての価値本書『菅原道真』(金剛出版、1980年)は、福岡を拠点に活動した精神医学者・王丸勇(おうまるいさむ)によって著された人物論的...
小説の闘牛場

 【夏目漱石】『道草』紹介・感想|自伝風読み切りに垣間見える苦悩と素顔

【夏目漱石】『道草』紹介・感想|自伝風読み切りに垣間見える苦悩と素顔あらすじ|書斎から一歩外へ夏目漱石の『道草』は、晩年に完成した自伝的小説である。たとえば『硝子戸の中』が、病弱な身体を抱えた漱石が自室にこもりながら綴った“内向き”な作品だ...