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谷崎潤一郎訳【源氏物語】「夕顔」〜愛人を取り殺した魔物が出る話

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原文の魅力

”原文”の持つ魅力というものに取り憑かれ、ここのところ日本文学にハマっている。谷崎潤一郎がその生涯3回目の現代語訳を試みた『源氏物語』は、谷崎氏の訳を原文で読むことができる;原文の原文、『源氏物語』そのものは、聞くところによると学者や専門家でないと解読不可能らしい。

私たちは日本人。日本で生まれ育ち、日本語を話すネイティブである。フランス語や英語の訳書をいくら読もうが、そこにどんなことが書いてあろうが、結局は水で薄めたお酒のようなものでしかない。あるいは外国語の原文を読んだところで、母国語でないのだから同じことである。

しかし昔の読みづらい難解な日本語に接する時、忘れられていた祖先のDNAのような触覚が目を覚ます。その快感の快さ;定評ある谷崎潤一郎氏訳の『源氏物語』は、平安朝の上流婦人作家(紫式部)による平和期の退廃的な日本古来の美を歌っている。

ところどころに”和歌”が挿入され、世にも類なき容貌を持って生まれた”光源氏”の女漁り、恋の歌のやりとりが展開される。筆者も谷崎氏の訳を全面的に理解できない初心者なのではあるが、だんだんと『源氏物語』の持つ妖しい魅惑のようなものが感じられるようになってきた。

今回は第一巻から比較的紹介しやすい内容の「夕顔」から見所を持ってきて記事にする。

「夕顔」

源氏は引きこもって身を潜め暮らしているらしい、とある意味ありげな女「夕顔」を見初め山の中の別荘に連れ込んだ。平安時代の山の中の一軒家がどれほど物寂しいか、ご想像いただきたい:さてそこで一緒に床に伏せっているうち、源氏はうつらうつらし始めた。

夢の中で一緒に寝ている女の枕元に、極めて美しいもう一人の女が座っていた。そして源氏に向かって「私を放っておいて、なんでまたこんな女と」と言って責めた。何とも言えない嫌な気分がして目を覚ますと、蝋燭の火が消えて真っ暗だった。

物の怪が出る強い気配がして部下を呼ぶが返事もない;廊下に出てみるとそこも灯りが全部消えていて暗黒だった。ようやく一人の者が起きてきたが怯えきっている様子。他の者たちは眠ってしまっていて起きないらしい。

部屋の中に火を灯すと寝ている女の傍にもう一人、別の女がいたのがすっと風のように消えるのが一瞬見えた。夕顔はすでに死んで硬くなっていた。一同驚きと恐怖に襲われて、このことが世間に知られたらまずいと思い、一刻も早く源氏に帰るように勧めた。

女の遺骸はお坊さんのいる寺に運び込んで拝んでもらうように決まり、車は二方に別れて物寂しい別荘を後にした。以来源氏は病気になり体調が優れず、毎日亡くした女のことを思い患って泣くのだった。

まとめ

『源氏物語』第一巻「夕顔」は怪談の要素が濃い不気味な内容で、こんな物語もあったのかという奇妙な感想を抱かせる。「陰翳礼賛」で暗闇の美しさを讃えた谷崎氏の訳は奥が深すぎて付いていくのが難しいが、頑張って読んでいるところである。

『源氏物語』に代表される”日本古来の美”を学ぶことで、日本文学のルーツを垣間見ることができる。「金閣寺」で三島由紀夫は主人公に金閣に火を点けさせて燃やすが、なぜあまりに美しいが故に金閣を破壊しなければならなかったのか、ちょっとだけわかってくる。

次回は源氏が幼い少女を見初めてしつこく家に連れ込もうとする「若紫」でも紹介したい。

●参考→【谷崎潤一郎】「陰翳礼賛」〜谷崎潤一郎氏の美学論を紹介

日本の誇る昭和の作家【三島由紀夫】「金閣寺」レビュー

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