【泉鏡花】「多神教」〜恐るべき神道キャラクター総登場

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昭和2年発表の比較的新しい戯曲「多神教」は、文体は明治の作品と同じく難しいが、解読すれば気違い染みた面白さの怪異な内容である。

登場人物が神社の神主や姫神や烏天狗などであるため、呪いの5寸釘の藁人形など色々な古来の迷信に基づいているところから題名がつけられたのだろう。

あらすじ

とある森近くの神社が舞台。登場人物は装飾はないが能の面をつけた村人たち、太鼓叩き、神職の一団、子供達、姫神、大阪の役者に捨てられた妾、馬引き、姫神、巫女、一つ目小僧の男女、烏天狗など。

神社が神楽で祭りを盛り上げているめでたい日に、妾は誰にも見られず藁人形と5寸釘、他種々の呪いのためのアイテムを狢の毛皮で包んだ袋にしまって森に潜んでいた。なぜなら今日がその満願日、一番人に見つかりやすいと言われる日だったからだ。

もし呪いをかけているところが見つかればもう願いは叶わない。昨日までは獣にすら出会わなかった。藁人形を打つのは夜中の丑三つ時;今夜のため参拝人を装うことで人目を欺くことができよう、そう考えた。

落ち葉拾い

子供達が落ち葉拾いの掃除をしていると妾がやってきた。子供達は化け狐かと思って逃げる。女は境内に腰掛けてうつらうつらしながら、地獄の針の山の夢を見る。胸元に呪いの道具一式をしまっていたが、そこへ馬引きがお供えの酒を飲みながら通りかかる。

最初姫神かと思い恐れて女を拝んだ。ただの女だということがわかると腹がたった;すると妾の袂から大きくて太い釘がぽとりと落ちた。馬引きは神主様に言いつけに立ち去った。

「道成寺」

一団が女の元へやって来ると胸元に手を突っ込んで藁人形を引きずり出した。釘がいくつも刺さっている。女は大阪で能楽「道成寺」の役者をやっている俳優に捨てられ、男を恨んで呪っているのだった。

(「道成寺」はYouTubeでも見ることができるし、三島由紀夫の「近代能楽集」でも読める。山場で大きな鐘の仕掛けが役者の上にどんと落ちる、あれである。)

*参考→三島由紀夫【近代能楽集】の楽しみ方を紹介〜日本の伝統芸能「能」の魅力

姫神様

村人と神主らは女をひっ捕らえて裸にして踊らせ辱めようとした;その時神社の戸が開いて巫女が現れ、幻のような鮮やかな世界が広がった。二十歳ほどに見える姫神が登場し、女の願いを叶えて進ぜる、と申された。

神主は抗議したが無駄だった;妾に弓矢とかんざしを渡すと、よく狙いなさい、と語りかけた。すると空中に光の幻影が出現、それへ向かって矢を放った「己、畜生!」見事矢は刺さった。あがる笑い声「おほほほほ」。

フクロウ

道成寺の役者と思しき人物が空から舞いながら落ちてきた。とそこへ烏天狗が割って入り、場はめちゃくちゃに。神主たちは混乱し、夜中のフクロウが鳴き始める。姫神の魔力でフクロウが次々と人々に乗り移り、みんなフクロウの鳴き声で鳴く「のりつけほうほう」。

読者は思わず吹き出す。ドタバタ劇は成功し、作者の狙いも見事当たる。

まとめ

シェイクスピアの喜劇にも近い笑い要素の濃い作品。「マクベス」のような呪いのアイテムが多数登場するのも共通している。「多神教」は傑作・最高に面白い戯曲だ。

*参考→【シェイクスピア】作品・まとめ記事〜感想・あらすじ集

●おすすめ→【泉鏡花】「山吹」〜人形使を鞭打つ家出不倫の若妻

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