哲学

プラトン【パイドン】「魂の不死について」〜毒をあおぐ直前の対話・レビュー・考察・要約

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要約

ソクラテスが市民から訴えられて死刑になり、獄中で毒を仰いで亡くなったエピソードは名高く、裁判におけるソクラテスの弁明も一つの対話編として出ている。

「パイドンー魂の不死について」はまさしく刑が執行されるその日の彼の行動を記録したものであり、これから死に赴く哲学者が信じている魂の不死を弟子たちとの対話で証明しようという試みである。

対話編の特徴

一般的にプラトンの対話編で共通している特徴なのだが、議論の対象となるものが「それそのもの」とか「というところのもの」「それによってそうであるところのそれ」などであるため、真面目に本を読み進めるのにはやや困難がある。

その傾向が甚だしいのが「テアイテトス」であるが、これは文明において話されている言語が実は音の集合に過ぎないということを、名詞、動詞その他文法までバラバラにメスを入れることで教えている。

人間同士の会話は唇や舌の運動が空気を伝わって鼓膜に振動を与えているだけである、と直接ではないがそのことを読むものに必然的に理解させようとする。そして謎の「それそのもの」について思考を高め導いていくー。

独自の神話

「パイドン」の興味深い内容について色々語られることもあると思うが、例えば死の練習とか、魂の不死とかいったテーマがそれであるがーその他にもこの本の面白い記述は多くある。

プラトンの本は最初抽象的な形而上の対象を議論して読者を眠たくさせるが、そこをがんばって乗り越えた者にいきなり不可思議な話をご褒美のように与えることがある。それは読む者に非常に「得をした」「知識を得た」と満足させるに足るものである。古代アレクサンドリアにおいてプラトンを読むのが真理の探究者たちにとって一大エンターテイメントであったのもわかる。最初からアクセル全開で進む途方もない奇書は唯一「ティマイオス」である。

「パイドン」においては喩え話として大地の地下奥深くを源とする4つの河のことが書かれている。オケアノス、コキュトス、アケロン、ピュリプレゲトンである。それらがタルタロスという死者が赴く奈落から流れ出ている、というのである。オケアノスとは我々の目にする大洋にあたる。ピュリプレゲトンとはマグマだろうか、灼熱の火のような流れとして書かれている。コキュトスは死者たちの嘆きの河なのだそうだ。最後にアケロンは三途の河にあたる。

またもうひとつ地球に住む人々の世界の上位互換世界について書かれているが、こちらは4大元素の比例をワンランクアップさせたものであり分かりやすいものとなっている。すなわち我々の空気は上位世界の水にあたり、かの世界の人々が呼吸する空気は宇宙空間を充しているアイテールであるという。似たような比例の話は「国家」など他の作品でもよく出ることがある。

パイドン―魂の不死について (岩波文庫)

アスクレーピオス

これらの話を語り終わったあと、ソクラテスは毒を飲むのであるがー弟子たちはこぞって胸をかきむしり嘆くのである。師は彼らを宥めながらいとも静かに最後を迎えたのであったが、最後の言葉が重大な意味をなしているような気がしてならない。

ソクラテスは「アスクレーピオスへのお供えを忘れていたから、ちゃんとやっておいてくれ」と言い残すのである。ちなみにアスクレーピオスとはギリシャ神話における医学の神である。

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