ポーの冒険長編小説
創元推理文庫ポー小説全集第2巻に収録されている「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」を中心としたポーの記事である。
エドガー・アラン・ポーは著名な短編作家・詩人として知られ、その作家としての生活も雑誌の懸賞への応募という形でスタートしたそうである。23歳のとき全集第1巻に収録されている「壜の中の手記」が最優秀作品賞を獲得し、ポーは賞金をゲットした。そしてその時の懸賞の審査員だったある人物からメッセンジャーという雑誌の編集の仕事をもらった。
メッセンジャー誌編集時代
天才の資質によくある気まぐれさからすぐに辞めてしまうが、あとでまた再就職の希望を出して受け入れられる。この時はポーもバリバリ働いたようでなんでも発行部数が500部から5倍の3500部にのし上がったそうである。
最初すぐ仕事を辞めた背景に従姉妹の女性ヴァージニアへの求婚があった。ポーはヴァージニアの母親から娘の結婚を断られており、酒浸りの自暴自棄になったのである。それでもポーはめげず、よほど諦めきれなかったのだろう、母親を説得し結婚の許可を受けることができた。当時ポーは26歳、妻は13歳だったが書類には21歳と記載した。
ヴァージニアとの結婚
さて結婚して願いが叶うやメッセンジャーに再就職する。辞めたけどやっぱり仕事したい、とでも言ったのであろうか。絶好調のポーは編集者としての名前を上げるが報酬が気に食わず、雑誌の創刊者と編集内容のことで不和になりまたこの愚か者は仕事を1年そこらで辞めてしまう。
ポーは家族共々ニューヨークへ移る。しかしあてにしていた仕事が得られず、そこでポーは「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」を完成させ出版したのである。
小説の構成
完成させた、と書いたのはこの小説が以前メッセンジャーに2度ほど掲載されていたからである。そしてこの小説は短編が多いポーにとって断トツに長く、結構なヴォリュームがあるのだ。
小説の構成はアーサーとその友達のオーガスタスが船に忍び込んで海洋へ旅立つところから、ラストの南極での神秘体験まで続く。
まとめ
「アーサー・ゴードン・ピム」の後半は、生活のために一生懸命ページ数を埋めようという気概が感じられる。前半は狂気の沙汰のような面白さだが。
見どころは船上の謀反、船底からの脱出、海洋の漂流、人肉嗜食など。この冒険談を読むと21世紀の文明社会で悩んでいるのが、みっともなくて馬鹿らしくなる。それほどの面白さ。
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