ウィリアム・シェイクスピアは16世紀〜17世紀に活躍したイギリスの劇作家・詩人。その生涯は「マルドロールの歌」のロートレアモンのように記録が無く、作品の製作時期も不明であり謎に包まれている。
邦訳を以前読んだことはあったが、筋が面白いだけでなく魅力的な名言が多い本であるためつい買いたくなってしまった「マクベス」を今回はレビューする。
あらすじ
ストーリーは「ハムレット」のように複雑ではない。物語の舞台はスコットランド。戦場の猛将マクベスは偉大な戦績あげて帰る途中、3人の魔女に出会う。怪しい魔女らはマクベスが今持っている領地の他にもう一つ別の領地をもらえること、さらには国王になるであろうことを預言される。
マクベスは王に大きな歓迎と賞賛で迎えられ、魔女の預言通り王から新たな領地を授かったのだった。マクベスの心に悪魔の力が入り込んだかのように、彼は王位が欲しくなった。そして自分の城で歓待していた王をマクベス夫人と共謀して殺害した。
罪は眠っていた見張り人に殺した血をなすりつけて背負わせた。王位に登るとともに次々に近親者たちを裏切って消していく。魔女はマクベスに「バーナムの森が動いて城に攻め寄せて来ない限りは安泰」「人の女から生まれた者は彼を殺すことはできない」という、二つの預言をした。
だがついに彼の最後が来た。森の枝を切って頭上にかざし擬態した軍隊が、暴君を亡き者にするために押し寄せる。さらに帝王切開によって女の腹から月足らずで飛び出したという貴族が、戦場でマクベスの首を切り落とす。王国には再び平和が訪れ正義が蘇った。
見どころ
「マクベス」が独特なのは魔女の妖術の場面がやたら多いところだ。シェイクスピアの作品はけっこう魔法や亡霊が出てくるが、「マクベス」ほど超自然的な幻影の登場シーンが多いのはないのではないか。
でもダサい日本語訳だと原文にあるであろう不気味さがちっとも伝わらない。可能ならオリジナルの英語を当たって見るべきであろう。そんな筆者も原文は読んではいないのだが。
名言集
では今回のメインである名言集へ行こう。じっくりこれらを味わい反芻する、そのために本を買ったようなものなのだから。
「夜も更けたが、何時頃かな、フリーアンス?」「月は沈みました、時計の音を聞かなかったけど」「月が沈むのは12時だ」「もっと遅いでしょう、いまは」ーバンクォー、フリーアンス
「慈悲深い天使たちよ、安らかな眠りの中に入り込む呪わしい妄想を抑えたまえ」ーバンクォー
「来ておくれ、暗闇の夜、どす黒い地獄の煙に身を包んで、早くここへ」ーマクベス夫人
「掴めぬか、目にはまだ見えているのに。ええい、呪わしい幻め!姿は見せても手には触らせぬというのか」「俺の目がどうかしたのか。それとも目だけ確かで他の感覚がおかしいのか」ーマクベス
「やけに叩きやがるなあ!地獄の門番ともなれば、しょっちゅう鍵を回してなければならないだろう」ー門番
「昼の正直者たちは首うなだれてまどろみ出す。夜の暗闇の手先どもは餌を求めて蠢き出す」ーマクベス
「何時頃だろう?」「夜と昼とが自分の時間だと争うころでしょう」ーマクベス、マクベス夫人
「なぜこんなものを見せる?四人目も!目がくらむ!畜生、この行列は最後の審判まで続くのか?」ーマクベス
「悪魔に黒く染めてもらえ、その青白い面を!馬鹿が」「その怯えた面の皮をひん剥いて、血の色を通わせてこい、青虫め。」ーマクベス
「墓場が一度納めた死体を吐き出すのなら、これからは鳶の胃袋を墓にすればいい」「これまでは人は脳天を叩き割られたら死んでいた。それで終わりだった。だがいまは再び立ち上がる」ーマクベス
「失せろ!姿を見せるな!大地へと戻れ!貴様の骨に髄はあるまい、貴様の血は冷たいはずだ、俺を見据える貴様の目は、物の形も見えないだろう」ーマクベス
「消え失せろ、影法師!幻め、消えてしまえ!」ーマクベス
「明日、また明日、また明日、と時は小刻みな足取りで1日1日を進み、ついには歴史の最後の一瞬へたどり着く。昨日という日は全て愚かな人間が塵と化す死への道を照らして来た。消えろ、消えろ、束の間の灯火!人生は歩き回る影法師、哀れな役者だ、舞台の上で大げさに見栄を切っても出番が終われば消えてしまう。白痴の喋る物語だ、喚き立てる響と怒りは凄まじいが、意味は何一つありはしない」ーマクベス
まとめ
シェイクスピアの本は名言・名場面が多いと言われる。無論この「マクベス」にもここでは紹介しきれないほどに魅力的な詩句が詰まっている。やはり一度は原文で読むべきなのだろう。
◯「ハムレット」はこちら→シェイクスピア【ハムレット】わかりやすく解説
●まとめ記事→【シェイクスピア】作品・まとめ記事〜感想・あらすじ集