バンドとアルバム
SWANS(スワンズ)は1982年に結成されたいわゆる”ポスト・パンク”に分類されるバンド。歯のCDジャケットの1stアルバム” Filth "は有名だから知っている方もあろう。
(バンドのボーカルは年少時代に殺人を犯しており、その贖罪のために音楽をやっているという話を聞いた;ライブでは跪いて観客に” I am sorry "と謝っている姿もあったそうな。)
ポスト・パンクと聞くとセックス・ピストルズのジョニー・ロットンが結成したパブリック・イメージ・リミテッドなんかを思い浮かべてしまうが、スワンズはノイズ・バンドなのでそれらポスト・パンクのような軟弱な音と比べるのは間違っている。
スワンズのノイズはかっこいい;特に死にたい気分な時に聞くと、かっこよすぎて死にたい気分を忘れさせるくらいに、痺れるほど音に酔わせられる。周囲の迷惑にならないよう、ヘッドホンなどで大音量で聴くことを勧める。
特にApple Musicで出ている” Filth "ともう1枚CDの入ったスペシャル版には、82, 83年ニューヨークで行われたライブ音源が付いており、これがむちゃくちゃかっこいい。
だがただ単に人と違ったモノを聴きたいという興味本位の方にはオススメしない;そういう人は聴いても「何これ。雑音ばっかじゃん」で終わりだろう。やめておくと良い。
*Apple Musicで聴いてみる→Filth / Body To Body, Job to Job
小話:映画「ピノキオ√964」
SWANSにはちょっと思い出がある。恋人に振られて何か新しいことをやってみようかどうしようかと思い倦んでいた20代の頃、私はとあるインディー・レーベルの映画制作”ホネ工房”のスタッフとしてボランティアに参加させていただいた。
スタッフと言ってもやらせられたのはお茶汲みや弁当受け取りなどの雑用だけだったと思う。しかも新聞配達の朝刊の仕事のあとにやっていたから、集合時間が早いと遅刻したりした。数人の役者さんと顔を合わせる機会もあり、俳優ってこんななのかと思わされた。
その映画はノイズ・サウンドが強烈な作品で、映像も荒かったがとにかく「音」の映画だった;映像はノイズ・サウンドのビデオクリップ的役割しかなく、ストーリーらしいストーリーもないのだった。
その映画は「ピノキオ√964」(ピノキオ・ルート・キュウロクヨン。つまり”苦しい”、である)といい、中野武蔵野ホールで上映された。内容は例えるなら”鉄男”に近い印象はある。監督は”ゲロリスト”の福居ショウジン氏。
公開初日に観に行ってエンドロールに小さく私の名前も入れてあったのは嬉しかった。途中でばっくれたのにも関わらず。その映画の音楽を担当しておられた方がスワンズを知っていた。
普段会社員をやっていると語っていたその方の名は忘れたが、事務所で音楽やノイズ・バンドの話になりSWANSで話が通じたのを覚えている。うっすらとした記憶でしかないが、いつまでも忘れない。(wikipediaには長嶌 寛幸氏という名が載っているが、私が話したのはこの方だったのだろうか。)
あと事務所にはもう一人どっかから家出してきて住み着いているという若者がおり、私なんかよりとても働いていたのを記憶している。
映画の監督はノイズ・バンドもやっていてドラムを探しているそうで、私は自分が入ってるパンク・バンドのテープを前述の音楽担当の方に聞かせたが、真面目にスタッフを続けてればメンバーになれただろうか。
●関連記事→【原宿ホコ天】の記憶〜バンドブームとアマチュア・パンク・バンド
まとめ
ナパーム・デスなんかもノイズが気持ちいいメタルだけれども、スワンズはメタルなどとは異なり、ほとんど完全な雑音でありながら、それらをロックにまとめている。能力の高い耳と脳を持った男なら必聴のバンドである。
*SWANSは映像は少ないがYoutubeなどでも音源を聴けるので興味のある方はどうぞ →Swans - New York City 1982-1983 (audio)