最後のオペラ
この素晴らしい作品はモーツァルト最後のオペラである。モーツァルトは数々のオペラ作品を実は残している。だが「フィガロの結婚」「ドン・ジョバンニ」そしてこの「魔笛」の3つは特に有名だ。主題の面白さや舞台の規模、CD化等の影響もあるのだろう。
私も3つしか知らない人の一人だ。いつか他のオペラも聴いてみたいとは思うが、これら3つさえ聴き潰すのは困難なほど長く奥が深いため、多分無理だろう。
魔笛あらすじ
「魔笛」の台本あらすじにおいては16世紀に結成の起源を遡る秘密結社、フリーメーソンの秘密の教義や儀式を描いている。
モーツァルトの最後のオペラというだけでも興味をそそるが、その音楽の崇高さもさることながら主題がフリーメーソンであり、台本を例えば物語として見る場合これといったまとまった筋もない。まるでロートレアモンの歌のようである。
しかもイタリア語が普通のオペラをあえてドイツ語で書くなど、モーツァルトの異端ぶりが窺える。
まことに時代の先を行っていた音楽家だったのだなぁと思わせる。
フリーメーソンとは
当初は秘密結社のようだったが現代は公然と活動・存在しているようである。
秘密結社については知識を得たければ澁澤龍彦の「秘密結社の手帖」がわかりやすくて面白い。
秘密結社という以上なぜその正体がわかるだろうか。フリーメーソンは石工組合が前身となって発足した組織であるが、入会するために秘密の儀式を行ったり、秘密の意味を持つシンボル・マークや秘密の教義を持っていた。ともかく秘密だらけというわけである。
多分wikipediaよりも澁澤を読んだ方が良い。
まとめ
天才とはいえ晩年貧乏と借金で苦労していたモーツァルトの考えていたことや、思想などは詩人とか哲学者ではないから文字によっては知るよしもない。
しかし彼の音楽を聴き、彼の精神に私たちは触れる。
その完璧な旋律、メロディー、楽譜が言葉となって時代を超えた感動を後世の人々に与えるのだ。
私が「魔笛」を聴いて驚くのはモーツァルトの音楽創造性の至高性だけでなく、貧乏や病気や世間の無理解などからの音楽家の超越なのである。
確かに生活費が必要だったのかもしれない。借金取りにも追われていたであろう。しかし自己の音楽の中に身を置いている時、モーツァルトはこの世ならぬ優雅な美の精神の恩寵に浴している。
フリーメーソン、ドイツ語による作曲、死。なぜ最後のオペラが「魔笛」のような内容だったのか。
それは秘密の教義の音楽を仲立ちとした私たちへの謎かけなのかもしれない。