「ソドム120日」の饗宴舞台のシリング城には40人の人物が入場するが、彼等全部を紹介するのは骨が折れるため、中でも最も際立った最も気違い染みた想像力の産物としか思われないキャラクターのみ、ここでレビューしたい。
●前の記事の続き→【マルキ・ド・サド】「ソドム120日」澁澤龍彦訳・河出文庫版紹介
少年少女
まず全体としては嬲り者に分類される4人の妻たちと、16人の少年少女であるが、まず各8名ずつの子供達について申せば、彼等はそれぞれ年齢12歳から15歳の上玉揃いであり、現代で言えばいわば”国民的美少女”または美少年の選考にも等しき厳格な審査によって選ばれた。
ただし現代のようにスカウトや事務所との同意に基づく契約によらず、もっぱら誘拐によってフランス中からさらわれてきた子供達である。守護者や家族は皆毒殺されたりその場で殺された。
妻たちは”4人の友達”(彼等については追って述べる)の配偶者であるが、各友達と近親相姦の間柄にありかつ不義密通によって結ばれている。妻たちの年齢は18歳から24歳で、いずれも美女神の権化のような姿をしているが、彼女たちの中でただ美しいでは終わらない一筆しておきたいキャラもいる。
すなわちブランジ公爵の長女でキュルヴァル法院長の妻ジュリー;彼女は口及びヴァギナ、アナルの悪臭がひどく、食いしん坊で飲酒癖があった。後述するキュルヴァル法院長はこういった欠点が逆に気に入った。
強蔵たち
8人の巨大な男根所有者たち(強蔵と呼ばれる)のうち4人が小説に名前が出てくるが、そのうち二人は”尻破り””天突き”の異名を持つ。彼等は全員長さ27センチから33センチ、周囲21センチから24センチの一物をもつ25歳から30歳の若者である。
”尻破り”は男根がねじくれ曲がっていて、亀頭がすこぶる巨大なためそのようなあだ名がついた:”天突き”は常に勃起していて、そうでなくともちょっと触れただけでそそり立つものだから、そのように呼ばれた。
語り女・召使
4人の”語り女”は人生経験豊富な48歳から56歳、彼女たちは一人ずつ150編の物語を語りきかせ、合計600の情欲を紡ぐ;最初の女は普通の情欲・次は複雑な情欲・次は罪の情欲・最後は危険な情欲である。第3番目あたりから殺人の領域に踏み込むようであるが、まだ読んでないのでわからない。
語り女の中で鳥を務めるデグランジュは最年長で、尻は”マーブル紙”のようにしなびており、その肛門は途方もなく大きかった。乳が一つしかなく、片目で指は3本、歯が6本抜けていた。まさしく「歴戦の勇士」といった容貌。
他4人の召使いたちもかなりグロテスクである。中でも4番目の女ファンションは69歳、自分の身代わりが6回も絞首刑に執行されていて、口には腐った歯が2本しかなく、尻が丹毒で、肛門には巨大な痔核がぶら下がっており、
ヴァギナは下疳に犯され、年がら年中酔っ払ってゲロを吐き、大きな肛門から自分でも気づかずに屁をこきまくる。
召使い女のうち、もう一人素通りできない人物がいる;3番目のテレーズである。彼女は62歳で片足がねじれ片足がびっこ、大柄で骸骨のような、頭には毛が全然無く、歯が一本もない口からは卒倒するくらいの悪臭が発していた。ぶよぶよした傷だらけの尻は棒の周りに皮を巻きつけることができるほど。
尻の穴は噴火口のように大きく、便器のように臭く、生まれてから尻を拭いたことがなかったので、理論上に従うとそこにはまだ子供の頃の糞が付着していた。ヴァギナはおよそ考えられうる汚物と醜悪の集積所で、近寄るものの気を失わせるに十分な墓穴に近かった。
法院長
最後に”4人の友達”はいずれも強烈だが、一番筆者が気に入ったキュルヴァル法院長のことをお伝えしたい。
60歳で背が高く骸骨同然の身体;雑巾みたいな尻たぶの奥の便器の穴のような肛門に、いつも6センチほどの厚みの糞を付けている。しかし一度おえ返ると長さ24センチ、周囲21センチにも及ぶ巨根を持つ。
割礼を受けているが亀頭に清潔感はなくいつも汚れていた。なかなか勃起しないにも関わらず毎日のように射精している。放蕩のあまり感覚が荒みすぎて完全な無感覚・痴呆の相を帯び、酒浸りかつ大食漢である。
恐ろしい殺人を犯したことがあり、イク時は一種の淫らな怒りを感じ、これが彼を残虐行為に駆り立てる。
続き
もっと細かい部分でここに述べきれてない、絶妙なサドの文章の澁澤訳があるのだが、とても網羅できそうにない。
さて、ここに書ききれなかった極悪人たちと舞台装置に取り巻かれて、「黒い森」のシリング城で何が起きるのだろうか?