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【泉鏡花】「義血侠血」(ぎけつきょうけつ)〜「滝の白糸」原作・感想とあらすじ

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難解な文章の原作を、読者に代わり映画と比較などしつつ簡単に解説する。

*参考YouTube動画→The Water Magician / 滝の白糸 (1933) (EN/ES)

ストーリー

一行は宣伝文句に誘われてとある乗り合い馬車に乗り込む;”人力車より早い”ならばと次の道駅まで早うやってくれと御者にせっついた。だがヤクザな車引きらが競争心を起こし、数人がかりで引いて馬車を追い越した。

乗客は文句を言う。”なんでぃ、遅えじゃあねえか”たまたま乗り合わせた一人の美人が御者に酒代と言って気前よく金を握らした。”どうぞこれであの人力車を追い抜いてやって”。

頭に血が上った御者は馬に鞭を入れ突っ走らせるが、無理をしたがために車輪がぶっ壊れてしまう。意気消沈する乗客たち。美人はさらに御者をからかった。

すると”奴らより早く着けばいいんでしょう”と馬を馬車から外しかっこよく跨ると、美人を後ろに乗せて飛び出した。全速力で疾走する馬は道駅にあるお茶屋に着いたが、美人はあまりのすごさに気を失っていた。

御者は美人を茶屋に置いてお上に介抱させ、馬車に戻る。目を冷ました女はかの男が金さんと言う名前であることと、学問を勉強中であることを知る。

美人芸人 

70年代のカー・アクション映画でよく若い女をスーパーカーでさらって道路をぶっ飛ばすシーンがあるが、それに近いものがある。美人はすっかりあの時の御者に惚れてしまっていた。

女は旅芸人一座の「滝の白糸」なる太夫であった。出し物は水芸で客たちは美人が操る水の鮮やかな動きに見とれるのだった;彼女のおかげで金沢公演は連日大入り、大儲けだった。

ある晩白糸が月を眺めに川の方まで散歩していると、橋の欄干にもたれて眠っている青年がいる;最初一座の小僧かと思ったが月明かりに顔が照らされるとあの時の御者だと知った。

”あんた女房はいるのかい、情婦の一人や半分はいるんだろ?”、”そんなものいない”、”いい男がその年で女もいないなんて恥だよ。なら私を可愛がってくださいよ”

女の貢ぎ

金さんはあの事件以来会社を首になって途方に暮れていた。話するうち彼は検事になりたくて司法試験の勉強をしていることを聞かされた。だが没落した名家の出で金が無いため、学問の都合がつかないのだった。

白糸は自分が貢ぐからいつか女房にしてやってくれとせがむ。最後に女の懇願に負けて金さんはすぐ勉強しに東京へ出ることにした。

出刃打ち事件

しかし大人気の水芸も夏場は良いが冬の客入りは遠のいた。仕送りもだんだんきつくなり、ようやっと次の半年分の仕送りを貯めたときだった。夜道で白糸は賊に襲われ金を奪われた”後生だからそのお金だけは!”。

落胆から起き上がると賊が落としていった出刃包丁を拾い、絶望してトボトボ歩いていると金のありそうな民家があった。盗みを働くために侵入し感づいた旦那を刺し殺して、目を覚ました女房に金を出させた。

逃げるときに”泥棒!”という怒鳴り声;凄まじい乱闘となりもみ合いの際包丁を落とし、白糸の着物の片袖がちぎれた。後日取り調べが始まったが白糸はあくまで犯行を否認。包丁から足が出た賊は自分が盗ったのは白糸の金で人は殺してないと言った。

犯行の審判

公判が行われ白糸と賊は裁判にかけられる。そこに登場した検事こそ彼女が貢いだ”金さん”だった。金さんの問いただしについに本当のことを喋り、仕送りの金を奪われて絶望して拾った出刃包丁で犯行に及んだことを述べた。

滝の白糸は死刑になり、恩人を死刑判決に導いた金さんはその後自殺した。

まとめ・感想

最高の小説。渋い味の深い文体は何度読んでもかっこいい。一度読んで理解できなければ段落ごとに何回も読むうちだんだんわかってくる。鏡花の文章はそういうスタイルなのだ。澁澤達彦と三島由紀夫でさえ”難しい”と対談で言っているほど。

映画は陰影の美しい映像で魅了されるが展開が原作ほどスピーディーでなく、だんだん冗長になってきて俗悪な改変が見え見えする。だが物語を理解する上でとても助けにはなるはずだ。

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