お盆の親戚の長期滞在中、テレビの画面に釘付けになり時折奇声を発しつつ「家族団欒」に打ち興じる、団塊世代の姿を見ながらあるパンク・ソングの歌詞を思い出していた;
町田町蔵がヴォーカルを務めたバンド ”INU" (犬) 81年のアルバム「メシ食うな!」収録、”フェイド・アウト” だった。
*Apple Musicで試聴する⏩Meshi Kuuna! / Inu
◯参考→お盆・正月【親戚集まり】対策〜「親戚集まり」が苦手な方へ
「フェイド・アウト」歌詞
「曖昧な欲望しか持てず 曖昧な欲望を持て余し いつもお前はテレビに釘付け 疲れ果てても やめられない
お前の体はフェイド・アウト 消え入り果てて行く お前の体はフェイド・アウト 消え入り果てて行く
今日は昨日の続きで 明日は今日の続きか 毎日どうでもいいことで 忙しく 疲労の埃が 肩に積もる
お前の体はフェイド・アウト 消え入り果てて行く お前の体はフェイド・アウト 消え入り果てて行く」
といった、いわば”中二病”色満載のヴォキャブラリーである。
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アルバム「メシ食うな!」
”フェイド・アウト”に限らず「メシ食うな!」の曲の歌詞は、現代社会のシステムに疑問を抱いている世代の強い共感をそそる語句で溢れている;
Wikipediaによると "INU" の音楽性はセックス・ピストルズと共に、「パブリック・イメージ・リミテッドを思わせるノイジーで破壊的サウンド」と書かれている。確かにジョン・ライドンへの強い崇拝が感じられる出来となっている。
筆者が改めて聴いたところだと、特にP.I.L (Public Image Limited) のセカンド・アルバム、"Second Edition" 通称 "Metal Box" の影響が強い。
上述した日本語歌詞といい、聞いておくべき邦楽のバンドとして一推しできる。今聴いても存分にかっこいいからだ。
*Apple Musicで試聴する➡️Second Edition / Public Image Ltd.
町田町蔵
ここで簡単に町田町蔵について書く:氏はセックス・ピストルズに衝撃を受け大阪でパンク・バンドを結成。その後PILのジョニー・ロットンの跡を追うようにして”INU" (犬)をスタートするが、わずか3ヶ月で解散。
バンドに出たり入ったりの試行錯誤の後、詩人・小説家として活動しはじめる。芥川賞ほか様々な文学の受賞歴がある。どちらかというと作家として有名なのではないだろうか。
カラーテレビ
さて前置きはこの辺にしよう;冒頭に述べた団塊世代は戦後の教育を受けて育ってきた;”カラーテレビ”を家族皆が囲み、明るい未来を心に描きながら今日まで生きてきた。
現在はネットが主流でテレビはもう終わっている。でもいいではないか。彼らはテレビが大好き世代なのだから。
問題となるのは町田町蔵の”中二病”の歌詞である。”お前の体はフェイド・アウト” 。そう、「時間」は流れて行く。
テレビを見ながら奇声を発し、童心に帰る;10年生きようと、70年生きようと同じだ。彼らは何も「思考」しない。
そのうち最初から生まれても死んでもいなかったかのように、彼らの存在は消え去る。
お寺で葬式の時読まされるお経に「たとえ百年生きようとも真理を思うことがなければ、何の意味もない。だがただの1日真理に到達できるのならば、それは永遠の命に値する」とある。退屈な法事からも何かは学べる。
まとめ
町田町蔵はアルバムの曲をこう言い放って締めくくる;「ええ加減にせんと気ぃ狂って死ぬ!」それはもっともだろう。こういう世の中、まともな神経の人間なら誰だって気ぃ狂って死ぬわな。
しかし若者は徐々に社会に適応し愚劣な文化に慣らされて行く;人々はそれを「隷属」とか「敗北」と呼ぶのだが。今回はだいぶパンク・メッセージ色の濃い内容になってしまった 😉 町田町蔵のパンク魂よ、永遠なれ(笑)