エッセー パンデミック

【COVID-19】「緊急事態宣言」の解除について〜エピソード『バラムの驢馬』に寄せて

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ランボー2

日本政府の「緊急事態宣言」は外国の厳しい措置に比較すれば、すかしっ屁のように迫力がなかったが、その解除も実に言葉だけの実感しか受けなかった。一体何が解除なのか?まるで危機も安全の確保も人の言葉一つで決まるかのようだ。

「人間の最大の武器は頭脳だ」ランボー2のセリフ。個人が”危険”と感じたら警戒すべきであり、”安全”だと判断すれば警戒を緩めれば良い。今の状況どこが安全だろうか。全く安全安心などではない。戦後75年間続いた惰性的な平和の時代は過ぎ去ったのだ。これをまず自覚するべきだ。

バラク

私は「主」が大嫌いだが今回の記事あえて一つの喩えを話そう。苦難の時いつもよく思い出す「バラムの驢馬」だ。それはこういう話だ。

バラクはイスラエルを呪うために預言者バラムを呼び出した。夢の中で「主」は預言者に現れ、行っても良いが私が言うことだけ言え」と命令する。

さてバラムは驢馬に乗って出かけた。途中道で「主」の御使が抜き身の劔を持って前に立ち塞がった。これを見た驢馬は道を逸れ畑の方に逃げた。バラムは驢馬を打ち、元の道に引き戻そうとした。

「主」の御使はますます詰め寄り、道はますます狭くなり、驢馬は逃げようとして道脇の壁にバラムの足をぶっつけた。バラムは怒り狂いさらに驢馬を打った。

驢馬

御使はどんどん近づき、もはや右にも左にも避け切れないところまで迫った。驢馬はなおも逃げようとしバラムはますます強く打った。その時「主」は驢馬の口を開き、言葉が話せるようにしてやった。

「ご主人様、あなたをこれまで乗せて歩いてきて、一度でもあなたに逆らったことがありましょうか?何でこうも私を打つのですか!」

「それはお前が言うことを聞かない馬鹿者だからだ!この馬鹿者が!」その時「主」がバラムの目を開き、御使の姿が見えるようにしてやった。御使が言った。

「もしあのまま進んでいたならば、私はきっとあなたを殺していたでしょう。驢馬はあなたを守ろうとしたのですよ」

畜生道

仏教の開祖尊師は心を走り回らせるなということを教えた。それは尊師が人間を憐れんで苦しみから逃れられるようにだったのである。悟りを開いた尊師は周りの愚かな人間たちを見てまず「教えても無駄だ」と感じた。

そして彼らに真理の道を教えても害があるだけだろうと考えた。そこでまず尊師は「何もやりたくない」と思ったのだった。しかし精霊に薦められてどうか人類の幸福のため、あなたが開いた悟りへ至る教えを広めてくださいと頼まれたのだ。

だがやはり人間は心を走り回らせることをやめず、制することもできない。まるで畜生だ。餓鬼だ。地獄だ。三悪趣だ。仏の教えを侮るものは地獄へ落ちると説かれているではないか。結局のところCOVID-19パンデミック前の世界は愚者の楽園だったのであり、たとえ緊急事態が”解除”されてもそこへ舞い戻るまでの話。

だが楽園は元のようではなく虫に食い荒らされ、ボロボロに腐っている。それでも”古い蜜柑を力一杯絞るが如く、我らは後ろめたい行きずりの快楽を盗む”(『惡の華』)。

【緊急事態宣言】に寄せて〜「新型コロナウィルス」に対する政府の対応について思うこと

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