哲学

プラトン【饗宴】レビュー〜異色作・エロス、両性具有者、ダイモーンについて

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久しぶりにプラトンの「饗宴」を読んだ。たいていの図書館には置いてあるこの本は岩波文庫版の久保勉氏の訳であった。個人的にはプラトンの作品は全集の田中美知太郎訳が好きなのでいささか読みづらかった。しかも心無い鉛筆の落書きまであって白けさせらそうになったが、それでも全部読み終えることができたので簡単なレビューというか感想を書いておこうと思う。

「饗宴」概要

まずこの「饗宴」はプラトンの他の対話篇とは趣が異なっている興味ふかい作品の一つである。どういった点がそうであるかということについて述べる。作品の設定はとある気心知れた哲学者や識者の宴会が開かれた。そこで彼らは二日連続で飲み会をやってるし今日はあまり飲みたくないので、各自順番にエロスの神についての賛辞なり演説なりをやるということにして、これを以って酒の肴にしようというのであった。その席にはもちろんソクラテスも座っている。最終的にはソクラテスという人物の酒の強さをしこたま讃えるようにして話は終わるのであるが、プラトンの記述は師への愛情と尊敬に満ち溢れていて、あたかもソクラテスがまだ生きているかのようである。

エロス神の賛辞

エロスというのはギリシャの神であるが、その名の通り知らない者はない有名な神であり愛欲を司る。その他にもエロスには奥深い働きや恩恵が有り余るほどあるので、誰もがこの神を賛辞して止まない。また古代ギリシャの高尚な文化であったらしい少年愛についても語られる。そんな訳で結構なページ数エロスに対する一般的な演説がなされた後、しゃっくりをしていたため演説を先延ばしにしていたアリストファネスが興味深い話をする。

両性具有者の話

かつて地上には男と女の他にもう一つの性である両性具勇者がいた。ヘルマフロディトス(両性具有者)は頭が2つあり天の完全な生き物つまり天体に似て球形の身体をし、移動するときは8本の手足を駆使して回転運動した。恐るべき力を持っていたがため傲慢になり、ある時神の怒りを買ったヘルマフロディトスは神の手によって真っ二つに切断された。そして男の部分と女の部分に別たれて、それ以来各自は再び完全無欠にならんがために己の半身を探し求めるのだというあの説である。

ダイモーンとしてのエロス

そのうちソクラテスに順番が回ってくると、彼はディオティマという婦人から聞いたという話をする。それによるとエロスは神と人間の仲介役で偉大なダイモーン(神霊)なのだそうだ。また前の人たちがひたすらエロスを美しく優雅な神であると説いたのに対し、ここではエロスを粗忽で愛情に飢えた者としても描いている。

ソクラテスの賛辞

ソクラテスの話が終わると酔っ払って現れたアルキビヤデスがソクラテスの賛辞を語り始める。そんなこんなでワイワイガヤガヤ、プラトンの本では珍しい賑やかな場が繰り広げられる。最後に酔っ払い集団が会場になだれ込んできてもはや何がなんだかわからなくなる。朝方になった頃にはもはやソクラテスを含んだ3人だけ起きていていまだに飲んでいたが、そのうちの2人が寝込んだ。ソクラテスは2人に寝具をかけてやってから宴会場を後にし、そのまま現代のスーパー銭湯みたいなところへ湯浴みに行き、夕方まで過ごしてから帰ったそうだ。

このようにしてエロス賛辞で始まりソクラテス賛辞で本は終わる。

饗宴 (光文社古典新訳文庫) [ プラトン ]

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