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【プラトン】「ティマイオス」再読・感想〜プラトン全集(岩波書店)より

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この地上で最も魅力ある書物「ティマイオス」。古来様々な名著で引用され多くの偉大な学者・智者に強い影響を与えた。この本は呪文の一種である;読むと強烈なインパクトが魂に刻印される。それはおそらくプラトンがエジプトを訪れており、その地の魔術的象形文字から学んだ技倆なのではないか。

何回目の再読かは忘れたが色々と新たに気付かされたところがあったので、ここに書き留めておこうと思う。

●参考→プラトン【ティマイオス】おぼえがき・レビュー〜重要箇所をわかりやすく紹介

下拵え

「ティマイオス」を再読する前に下準備で読んだのは以下の書物:

ユークリッド「原論」(証明は飛ばした)、プトレマイオス「ハルモニア論」「テトラビブロス」「アルマゲスト」(計算は確かめなかった)、デカルト「屈折光学」、Newton別冊”人体完全ガイド”と”完全図解 元素と周期表”、

プラトン「国家」下巻、「ソクラテスの弁明」「パイドン」、アリストテレス「自然学」、ヘルメス・トリスメギストス「Corpus Hermeticum」(拙劣な英訳だが)etc.

である。今までの読感だと上述したごとく単なる強力な魔術・呪文なのかと思わされる文章がたくさんの「ティマイオス」なのだが、学者による注釈もあながち無意味なのではなく意外と的を得ているので、すっかり無視はできないなと思った。レビューを書いた本には題名にリンクを貼っておいた。

テトラクテュス

まず冒頭の「一人、二人、三人、おやティマイオス、四人目はどうしたのだね?」「病気になったのですよ、ソクラテス」だが、これが奥深いことは聞いていた;しかしどのように奥深いかは分かっていなかった。この書き出しはピュタゴラス派が誓った”テトラクテュス”なのだ。

”テトラクテュス”は10つまり1+2+3+4であり、完全な数だから。プラトンがピュタゴラス派を支持していたのは学院の門に『数学を学ばぬ者は入るべからず』と掲げていたのでも明らかだ。

正多面体

造物主が火・空気・水・土の4大元素を結合させるときに”比例関係”をもって親和力を与えたことについて;”比例”はユークリッド「原論」でも論じられているように純粋に数学的な数と数の関係。Newton別冊”元素と周期表”でもわかるように、原子核の周りに飛び交う電子は元素ごとに秩序が与えられており数が決まっている。

プラトンは本能的にこれを理解したものと考えられる。そのことは書物のあとの方で4大元素に4つの正多面体の形を与えたことからも伺える;すなわち正4面体・火、正8面体・空気、正20面体・水、正6面体・土である。なお永遠の数学の掟は5つの正多面体しか存在しないことが「原論」で証明されている。

もう1つの正12面体は面が正5角形であるため、プラトンが元素の原因とした直角三角形では構成されない。第5元素なのかはともかく本では「造物主が絵を書くために用いた」とされている。

ハルモニア論

造物主は宇宙に魂を与えるために「有」「同」「異」の3つの混合要素からそれを作るが、”等しい””不等”とかこれらはどれも数学的な要素である。さらに魂を1,2,3,4,8,9,27とそれらの数字間の比から構成したのは、ハルモニア論の階調に合わせるためだ。

この数字の比は「ハルモニア論」に書かれているオクターブや4度、5度の比例に一致する。注釈には5線譜に書き写した楽譜まで載っている。これを音楽にしたらどんな音なのだろうと思った。

ピュタゴラスは朝日の出と共に起きたならば、仕事を始める前にまず睡眠によって混乱した魂を、あたかも弦楽器を調律するように整えよと教えていたそうな。またプトレマイオスははっきりと音楽のハルモニアの階調が魂と宇宙に対応すると断言している。

現実が夢を決定し夢が現実を決定する以上、夢も現実も同じではなかろうか?そもそも現実は脳の内部に映写された幻・夢に過ぎぬ。ただ目覚めているときは触覚がやたら強いというだけで。

感想など

視覚についてのプラトンの記述は、Newton別冊”人体完全ガイド”に眼球と視覚の仕組みがわかりやすく説明されているから可愛らしく感じた。またデカルトの「屈折光学」の方がより正確で現代科学に近い。造物主が魂を身体につなぎ合わせるために、まず髄から始めたというところも”人体完全ガイド”を見ていれば同調しやすい。

一なる神が後代の神々すなわち星たちに命じて生き物の産出と消滅を任せたことも、「テトラビブロス」「アルマゲスト」「国家」下巻、「自然学」などで多方面から詳しく論じられている。これは詩的なイマジネーションに基づいたお話なのではなく、自然科学の譬えなのだ。

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