小説の闘牛場

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『ドリアン・グレイの肖像』レビュー|美と快楽の果てに堕ちる魂――ワイルド耽美文学の極北

『ドリアン・グレイの肖像』――美と快楽の果てに待つ魂の腐臭オスカー・ワイルドによる『ドリアン・グレイの肖像』(1890)は、表面上は「若さを失いたくない」という一つの願いから始まる物語だが、その奥に広がるのは、美の暴力、快楽の悪魔、そして倫...
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ビアズリー『美神の館』レビュー:象徴主義美学と退廃的芸術の頂点

ビアズリー『美神の館』レビュー:象徴主義の粋を極めた美学オスカー・ワイルドの『サロメ』の挿絵でも有名なアーサー・ラッカムの弟子として、オーブリー・ビアズリーは世紀末の象徴主義運動において、独自の地位を確立しました。その代表作の一つが、『美神...
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世紀末文学の美学と崩壊 ― オスカー・ワイルドからドストエフスキー、モーパッサンまでの退廃的美学

世紀末文学の美学と崩壊―オスカー・ワイルドからドストエフスキー、モーパッサンまで19世紀の終わり、いわゆる「世紀末」は、政治的・社会的変革の時代であり、その渦中にあった文学もまた深く変化していきました。オスカー・ワイルドの『サロメ』に見られ...
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 【エドガー・アラン・ポー短編傑作選】ランキング形式で読む名作レビュー

【エドガー・アラン・ポー】短編傑作選|個人的ランキングと部門別紹介はじめにエドガー・アラン・ポー──その名に筆者が初めて触れたのは二十歳の頃である。以来、幾度も再読を重ね、当ブログでも数多くの記事を記してきた。今回はその敬意を込めて、ポー短...
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三島由紀夫『命売ります』レビュー|軽妙な仮面の下に武士道が見え隠れする小説

三島由紀夫『命売ります』レビュー|軽薄な仮面の裏に潜む“死”の思想三島由紀夫の小説『命売ります』は、いかにも彼らしいタイトルである。だがその内容は一見して驚くほどポップで読みやすく、文体も軽妙。発表媒体は1968年の「週刊プレイボーイ」──...
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三島由紀夫『獣の戯れ』を解説|黒いスパナと倒錯の三角関係が描く愛と暴力の儀式

三島由紀夫『獣の戯れ』レビュー|黒いスパナに込められた灼熱のエロスと死はじめにしばらくぶりの三島由紀夫レビューである。本作『獣の戯れ』は以前に読了していたが、なぜかレビューを書かずにいた。未レビューの同時期の作品には『美徳のよろめき』『青の...
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三島由紀夫『夏子の冒険』レビュー|修道院と熊狩りをめぐる恋と精神の冒険譚

三島由紀夫『夏子の冒険』紹介・レビュー|修道院を飛び出し熊を追う恋愛冒険小説概要『夏子の冒険』は1951年に発表された、三島由紀夫の第7長編小説。地味なタイトルとは裏腹に、その内容は非常に独特かつ大胆な構成を持つ恋愛冒険小説です。戦後間もな...
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三島由紀夫『禁色』感想・紹介|戦後文学と同性愛の虚無を描く問題作

三島由紀夫『禁色』感想・紹介〜戦後文学と性愛の境界を問う長編小説はじめに『禁色』は三島由紀夫による戦後初期の代表的長編小説であり、その題名は平安時代において高位の官人しか着用を許されなかった「禁色(きんじき)」の衣装に由来します。ただし、本...
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三島由紀夫『潮騒』レビュー|純愛と神話が交錯する歌島の物語

三島由紀夫『潮騒』レビュー|歌島に響く純愛の“しおさい”舞台:三重の孤島・歌島物語の舞台は三重県沖に浮かぶ小さな島、歌島。現在は神島と呼ばれ、八代神社が祀られる観光地として知られている。この小説が発表されたのは1954年、戦後わずか9年後と...
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三島由紀夫『肉体の学校』レビュー|ゲイ・バーから始まる洒脱な恋と別れの物語

三島由紀夫『肉体の学校』を紹介|ゲイ・バーから始まる自由な愛の物語洒落た小説と錯覚する映画的テンポ『肉体の学校』は三島由紀夫の長編ながら、とても軽快なテンポで読める作品だ。タイトルから過激で艶めかしい物語を想像してしまうが、実際はむしろ小粋...