『十二夜』あらすじと感想|シェイクスピア喜劇の傑作を解説

シェイクスピア『十二夜』あらすじと感想|幻想の国イリリアで繰り広げられる恋と笑いの迷宮劇

作品概要

シェイクスピアの喜劇『十二夜(Twelfth Night)』は、ロマンチックで幻想的、そして時に滑稽なほど人間臭い恋模様が絡み合う不朽の名作です。

副題には「あるいはお好きなように(What You Will)」という柔らかい言葉が添えられています。これは観客に自由な解釈を委ねるという、どこか気楽で遊び心に満ちた作者の態度を象徴しています。

劇中では性別の偽装、勘違い、入れ替わりといった“喜劇の王道”がふんだんに使われ、観客を混乱と爆笑の渦に巻き込んでいきます。ストーリーはシンプルで、登場人物の関係性も明快。肩の力を抜いて楽しめる作品です。

物語の舞台:イリリアという幻想世界

舞台は「イリリア」という架空の国。響きからして何やら幻想的ですが、モデルとなったのは実在した古代ローマ時代の国家イリュリアで、現在のバルカン半島に位置していました(現代のスロベニアからアルバニアにかけての沿岸部)。

このエキゾチックな舞台が、物語全体に夢のような非現実感を与えています。

あらすじ

双子の兄妹セバスチャンとヴァイオラは、船旅の途中で嵐に遭い、それぞれ別の場所で救助されます。ヴァイオラは兄が溺死したと思い込み、男装して「シーザリオ」という名でイリリア侯爵オーシーノに仕えることに。

オーシーノはオリヴィアという若き未亡人に恋しており、ヴァイオラ(シーザリオ)はその恋文の仲介役として彼女のもとへ通います。ところがオリヴィアは、男装したヴァイオラに一目惚れしてしまい…。

恋の三角関係と誤解の連鎖

物語はヴァイオラ→オーシーノ→オリヴィア→ヴァイオラ(シーザリオ)という奇妙な恋の環を描きます。

一方その頃、生き延びていた兄セバスチャンは、助けてくれたアントニオという男の支援を受けてイリリアの町に出向きます。すると街中で突然喧嘩を吹っかけられたり、知らぬ女性(オリヴィア)から結婚を申し込まれたりと、訳のわからぬ展開に巻き込まれていきます。

登場人物たちが双子の入れ替わりに気づかぬまま、物語はどんどん錯綜していきますが、最後には全員が一堂に会し、誤解が解けて無事ハッピーエンドを迎えます。

登場人物たちの魅力と「道化師」

『十二夜』の魅力のひとつは、道化師フェステの存在です。中世ヨーロッパの「道化」は、単なる笑いの存在ではなく、知恵者として風刺や哲学的なコメントを発する重要な役回り。

フェステはユーモアを交えつつも、人間の愚かさや愛の不可解さを鋭く突いてくる存在であり、この劇を単なるロマンチック・コメディにとどめない深みを与えています。

男装と性の境界──エリザベス朝演劇の仕掛け

ヴァイオラの男装をはじめ、性の入れ替えや曖昧さがこの劇のテーマの一つです。面白いのは、当時のロンドン演劇では女性役も少年が演じていたこと。つまり、男(俳優)が女(ヴァイオラ)を演じ、その女がさらに男装してシーザリオになる、という二重の入れ替わりが起きていたのです。

こうした性の演技構造が、物語の中に妖しげで幻想的な空気を生み出していたともいえるでしょう。

感想:笑いと夢想の喜劇

『十二夜』は、読んでいて本当に楽しい戯曲です。混乱しながらもテンポよく展開されるラブコメディには、現代の映画やドラマにも通じる普遍的な魅力があります。

読者(観客)は、恋のすれ違いにやきもきし、道化の機知に笑い、最後の大団円に安堵する──そんな“感情のフルコース”を堪能できるはずです。

休日の午後にお茶でも片手に、幻想の国イリリアを訪ねてみてはいかがでしょうか? 😉

▼おすすめ書籍リンク

シェイクスピア全集 十二夜 (白水Uブックス) Kindle版

あわせて読みたい:シェイクスピア作品まとめ

▶︎ 【シェイクスピア戯曲まとめ】悲劇と喜劇を読むレビューリンク集

コメント

タイトルとURLをコピーしました