作品概要
シェイクスピアの『リチャード三世』は、もはや悲劇というよりホラー作品だ。不気味な外見と野心に満ちたグロスター公リチャードは、悪魔に取り憑かれたように冷酷な策略を次々と巡らせ、障害となる者を血に染めながら排除していく。
この作品は史実に基づいたイギリスの歴史劇であるが、登場人物が多く、血縁関係も複雑だ。だが、細かな背景をすべて理解しなくとも楽しめる。むしろ、ホラー映画のような恐怖と狂気の物語として読む方がスムーズかもしれない。
残虐な手口
シェイクスピア作品では人が死ぬのは珍しくないが、『リチャード三世』ほど大量に殺される作品は他にないだろう。リチャードの手法はまるで現代のサイコ・キラーのようで、巧みな言葉で人を操りながら、心の中ではすでに殺害計画が練られている。
彼は王位のために、血縁者どころか子どもまでも容赦なく抹殺する。特にロンドン塔で殺された2人の幼い王子の場面は、残虐さの極致だ。こうしてリチャードは血の海を渡って王座を手にするが、その道には呪いが積み重なっていく。
呪われた王
リチャードの恐怖政治は長続きしなかった。忠実だったバッキンガム公さえ見捨てられ、ついに正義を掲げるリッチモンド伯の軍が立ち上がる。そして決戦前夜、因果応報の時が訪れる。
殺された者たちの亡霊が、リチャードとリッチモンドの両陣営の寝所に現れるのだ。彼らは地獄からの使者として、リチャードには呪いを、リッチモンドには祝福を与えて去っていく。
リチャードを襲う悪夢
甥である2人の王子の霊は、こう語る:
「お前の夢の中で胸の中の鉛となり、お前を絶望と死に引きずり込んでやる!」
最も忠誠を尽くし、最後には殺されたバッキンガムの霊も現れる:
「貴様の頭に王冠を載せたのはこの俺だ。そして最後に殺されたのも俺だ。明日の戦いには、罪の報いとして絶望に打ちひしがれて死んでいけ!」
夜明けと勝利
翌朝、祝福を受けたリッチモンドは清々しく目覚め、敵陣へと進軍する。一方、呪われたリチャードは悪夢のせいで寝坊し、混乱の中にある。すでに部下たちは戦支度を終えていた。
激しい戦闘の末、ついにリチャード三世は討たれ、リッチモンドが王座を手にする。彼は慈愛と理性によって国を治めることを誓い、長きに渡ったヨーク家とランカスター家の争いはここに終結する。
まとめ
『リチャード三世』は単なる歴史劇にとどまらず、血と呪いと権力欲に満ちた人間の闇を描いた劇である。シェイクスピアの筆致は、恐怖と倫理のせめぎ合いを通して、観る者の心を深く揺さぶる。
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