シェイクスピア『夏の夜の夢』あらすじと感想|恋と魔法が交差する幻想劇

シェイクスピア『夏の夜の夢』あらすじと感想|恋は盲目、恋は移ろい、恋は魔法

シェイクスピアの喜劇『夏の夜の夢(A Midsummer Night’s Dream)』は、幻想と錯綜する恋愛模様、そして妖精たちの魔法が織りなす祝祭的な物語だ。作者自身が筆を楽しんでいるかのような軽妙な運びが印象的で、読み進めるうちに観客も読者も、夢の中に誘われていく。

背景と神話の影

物語の舞台は古代アテネ(アセンズ)。主要登場人物はアテネ大公シーシアスとその婚約者ヒポリタ。これはそれぞれギリシア神話のテーセウスとアマゾン族の女王ヒッポリュテに由来する。

実際の劇中で神話の物語が展開されることはないが、この神話的背景が、幻想劇としての雰囲気をより豊かに演出している。

四人の恋人たちの混乱

物語は、シーシアスとヒポリタの婚礼を控えた新月の数日前から始まる。そこに登場するのが、娘ハーミアとその父イジアス、ハーミアの恋人ライサンダー、そして父が娘の婚約者にと望むデメトリアス。

ハーミアはライサンダーを愛しているが、父はデメトリアスとの結婚を命じ、拒否すれば死刑と告げる。二人は駆け落ちを決意し、森の中で落ち合うことにする。

恋の追跡劇と裏切り

一方、ハーミアの友人ヘレナはデメトリアスに恋している。彼女は、ハーミアから聞き出した逃亡計画をデメトリアスに密告し、自分も森に入り彼を追いかける。

この四角関係は、次第に妖精たちの魔法によって複雑怪奇な展開を見せていく。

妖精たちと“パック”のいたずら

森では妖精の王オーベロンと女王タイターニアが喧嘩中。小妖精ロビン・グッドフェロー、通称“パック”が命じられ、魔法の花の汁を眠る人物の瞼に塗る──目覚めた瞬間最初に見た者に恋をするという。

この魔法が誤ってライサンダーにかけられたことで、彼はヘレナに一目惚れしてしまう。以後、愛の矢印はぐるぐると入り乱れ、誰が誰を愛していたのか、登場人物たち自身も見失う混乱が巻き起こる。

ロバの頭と職人芝居

この森には、シーシアスの結婚式の余興として素人芝居を練習する職人たちも現れる。その中の機織職人ボトムは、妖精パックのいたずらでロバの頭に変えられてしまう。

女王タイターニアはその姿のボトムに一目惚れし、夢のような恋が繰り広げられる。これもまた、魔法の力によるものだ。

結末:すべて夢だったのか

最後にオーベロンが魔法を解き、すべてが元通りに戻る。ヘレナとデメトリアス、ハーミアとライサンダー、そしてシーシアスとヒポリタの三組のカップルが結婚し、祝祭は最高潮に達する。

職人たちによる滑稽な芝居「ピラマスとシスビー」の上演も含めて、舞台は大団円を迎える。

感想:青春とはいつも夢のようなもの

『夏の夜の夢』は、そのタイトルどおり、すべてが夢幻のように展開される。恋は盲目であり、時に滑稽で、時に激しく、そして魔法のように人を翻弄する。

だがそれは、まさに青春の在り方そのものではないだろうか。読み終えた後に残るのは、不思議な幸福感──まるで一晩だけ夢を見ていたかのような感覚である。

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