【エドガー・アラン・ポー】短編『Hop-Frog(ちんば蛙)』あらすじと解説

小説

ちんば蛙と鎖がれた八匹のオランウータン|エドガー・アラン・ポーの復讐譚

エドガー・アラン・ポーの短編「Hop-Frog」は、異形の小人が仕掛ける鮮烈な復讐劇。タイトルの邦訳「ちんば蛙あるいは鎖がれた八匹のオランウータン」にも表れている通り、痛烈な風刺とホラーが交錯する、ポーらしい異色の名作です。

冗談好きの王と「ちんば蛙」

物語の舞台は“冗談”をこよなく愛する国の宮廷。そこでは、異国から連れてこられた小人・ちんば蛙(Hop-Frog)が、道化として人々を笑わせる役を担っていました。彼には、もう一人の小人で親友のトリペッタという美しい少女が寄り添います。

ちんば蛙は名の通り片脚が不自由で、跳ねるように歩きます。しかしその代償のように、腕力は異常なまでに発達しており、まるでどんな場所にもよじ登れる怪物のような存在でもありました。

運命の舞踏会

王が企画した仮装舞踏会。王と大臣たちの衣装が決まらず、冗談のつもりでちんば蛙に相談が持ちかけられます。その場で、ちんば蛙は酒を無理やり飲まされてしまいます。彼にとってアルコールは毒にも等しいものでした。

一杯目をなんとか耐えた彼に、王はさらに酒を注ごうとします。トリペッタが勇気を出して止めに入ると、王は彼女を突き飛ばし、酒を浴びせかけるという仕打ちをします。その瞬間、不穏な音が部屋に響きました。

「オランウータン」はいかが?

ちんば蛙は怒りに震えながらも冷静さを取り戻し、仮装のアイデアを提案します――それは「8匹のオランウータン」。タールと麻糸で装い、恐ろしい獣になりきるというものでした。王たちは面白がって了承し、舞踏会の夜がやってきます。

恐怖の仮装ショー

会場に現れた8匹の“獣”たちは、ちんば蛙の指示どおり、鎖で繋がれたまま突入。逃げ惑う人々を尻目に、ちんば蛙は扉を閉ざして会場を封鎖します。そして中央の天井から吊られた鎖に彼らを結びつけ、高く釣り上げました。

あの時の音――実はちんば蛙の歯ぎしりだったのです。「これが俺の道化の最終回だ!」と叫ぶと、彼は火を放ちます。タールと麻糸はあっという間に炎を広げ、王と大臣たちは一つの焼け焦げた塊となって燃え尽きました。

そして誰もいなくなった

事件の後、ちんば蛙とトリペッタは宮廷を後にし、祖国へと姿を消しました。彼らがその後どこへ行ったのか、誰も知る者はいません。

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