【ファイヤーバード・トランザム】アメ車とともに燃え尽きた青春|ポンティアック伝説を語る

日常

【ファイヤーバード・トランザム】の思い出──アメ車が輝いていた時代

伝説のバンディット・カー

トランザム、ポンティアック・ファイヤーバード・トランザム、あるいはフォーミュラー──呼び名は様々だが、最も有名なのは、やはり映画『トランザム7000(Smokey and the Bandit)』に登場した1977年式モデルだろう。

黒い車体に金のライン、ボンネットには金色のファイヤーバード(火の鳥)デカール──あの鷹目ヘッドライトのトランザムは、アメリカン・マッスルカーの象徴として一世を風靡した。

1978年式ファイヤーバード・トランザム
’78 Trans-am

マッスルカーの血統

ポンティアック(PONTIAC)は、かつてGM(ジェネラル・モーターズ)の中でも特にマッスルカーの名門として知られたブランドだ。シボレー・カマロとしばしば混同されるトランザムは、いわば姉妹車。特に90年代のカマロは、どこかトランザム79年式や映画『マッドマックス』のインターセプターに通じる風貌をもっていた。

ポンティアックは既にブランド自体が消滅してしまったが、その輝きは今なお忘れがたい。GTOやファイヤーバード──かつてのマッスルカーを維持できるのは、真のクルマ好きか、所ジョージのようなDIY&資金力のある人くらいだ。

V8とデカールの美学

1971年、455-HOエンジン搭載の“スーパーカー”が登場。なんと排気量は7500cc。軽自動車7台分である(笑)。V8エンジンの野太い咆哮は、現代のエコカーやEVにはない、野性と快楽の音だ。

ファイヤーバードのボンネット・デカール
フェニックス・デカール(例)

あの火の鳥は、エンジンの上で燃え上がる魂そのものだった。

バート・レイノルズと77年モデル

オイルショックの影響で、マッスルカー黄金期にも陰りが差し始めた1977年──バート・レイノルズ主演の『トランザム7000』で登場した黒いトランザムは、再び熱狂を巻き起こした。私が最も憧れたモデルであり、ついに一度も乗れなかった車でもある。

排気量6.6リッター、キャブレター制御のアナログエンジン。今では燃料噴射制御が当たり前の時代だが、昔の車は天気や気分でご機嫌が変わる。だからこそ、映画で主人公が車に「頼むぜ」と話しかける。あれは演出ではなく、リアルな付き合いだったのだ。

ちなみに77年トランザムは、映画『ブレーク・ダウン』『プリズナー』などでも登場するが、なぜか犯罪者やサイコが乗ることが多い。そして高確率でボロい。そして壊れる。それがまた最高にクールだった。

火の鳥の呪文

あのフェニックス・デカールは、単なる装飾ではない。貼るには技術が要り、素人がやるとズレたり空気が入る。アメリカのDIY魂があってこその代物。

あれは「突撃・玉砕・復活」のシンボルであり、周囲との差異化を象徴するアイコンでもあった。子どもの頃、自家用トラックの助手席からその姿を見て、私は心を奪われた。あれはヒーローの乗る車だった。

私とトランザム

20代の私は無謀にも89年式トランザム(フォーミュラー)を購入。雨漏りするボロ車だったが、V8エンジンは快調で、無理やり大きなデカールを貼った。ボンネットに入りきらず羽根が切れた。

そのローンが終わる前に79年式に乗り換え。白ボディに赤のデカール。1999年、ノストラダムスの予言を信じていた私は「どうせ人類滅亡するし」と開き直っていた。

だが人類は滅びず、私の財布だけが滅んだ。トランザム→軽→原付→足なしとなり、最終的に交通網の発達した神奈川へと流れ着いた。

ファイヤーバードのフロント
トランザムは、魂の乗り物だった。


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コメント

  1. 小学生にバットマンカーだ!と言われた より:

    「トランザム乗りらしい結末→借金まみれになった」のところで、大爆笑しました笑やっぱり皆さま同じなんですね〜

    私もかれこれ28年ほど前に89年式のGTAのT-TOPを無理して購入し、同じ結末をたどりました笑

    エンジンは絶好調だったのも同じです。雨漏りはしなかったのですが、雨の日に一度パワーウィンドウを開けると、閉めてもへりから雨水がつたって侵入してくることがありましたね。へりのパッキンの劣化の具合では入ってこない時期もあったので放置してましたが笑

    2年に一度はオルタネータが逝くのが最大の難点でした。税金と車検、タイヤも大きな負担でしたね。。。もちろんガソリンも(都内の普段の足で2.7km/ℓぐらいでした)!

    借金まみれになって、同じく所有車なしまで行って、最近は仕事のこともあり軽に笑

    でも、マッスルカーの魅力はお金には替えられないし、良い思い出はいっぱいあります。もう一度乗ることを目標に「復活」を目指しています。

    思わず共感できるおもしろい記事に行き当たり、笑えるやら泣けるやらで、ついコメントしました。

    ありがとうございます。

    • taka より:

      コメントありがとうございます。最初読んだとき自分の分身か当時の自分を知っているメカニックのイタズラかと思いました。復活を目指されているとのことで、できれば70年代式トランザムでお願いします。私はあきらめてYouTubeで動画をたまに観ています。89年式でやめておけば良かったけどどうしても79トランザムに乗りたかった。結局はボロなのに300万もしてぼられたので、大人で金持ちになれたらバリバリに整備済みのトランザムに乗りたいです。コメント者様のGTAも名車で現在はこれも結構します。厳しい時代ですが夢を持っているのは素晴らしいと思います。以上悪魔の誘惑でした。

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