【SWANS】(スワンズ)〜死にたい時に聴くと最高に気持ちいいノイズ・バンド
唯一無二の音:SWANSというバンド
SWANS(スワンズ)は1982年にニューヨークで結成された、いわゆる「ポスト・パンク」の潮流に属する伝説的バンドです。1stアルバム『Filth』の“歯”のジャケットは、一度見たら忘れられないインパクトを放っています。
ボーカルのマイケル・ジラ(Michael Gira)は、かつて少年期に犯した犯罪とその贖罪の意味を込めて音楽を続けている、という噂さえある人物。ライヴでは観客に向かって膝をつき「I am sorry」と懺悔する姿も目撃されています。
雑音がロックに昇華する瞬間
「ポスト・パンク」と言えばP.I.L.(パブリック・イメージ・リミテッド)などを連想しますが、SWANSの音はそうしたサウンドとは根本的に異なります。彼らの楽曲は、もはやメロディすら排除された“ノイズの塊”。
しかしこのノイズが、ひたすらかっこいい。特に鬱々とした夜、どうしようもなく心が沈んだとき、ヘッドホンで大音量にして聴くと、なぜか救われたような気分になる。死にたい気分さえも吹き飛ばす、それがSWANSの音楽の魔力です。
Apple Musicにある『Filth』+初期ライヴ音源のスペシャル版では、1982〜83年のNYライヴが聴けます。これがまた凄まじい迫力で、今聴いても古びた印象は皆無。
注意:ただの興味本位で聴くと後悔します
とはいえ、SWANSは「なんか変わったバンドないかな?」という気軽な気持ちで手を出すと、痛い目を見るタイプの音です。ノイズを音楽として感じられる“耳”を持たない人には、ただの雑音にしか聴こえないでしょう。
でも、ノイズとロックの境界にある「美しさ」を探す耳と脳を持つリスナーには、極上のご褒美になります。
個人的な記憶:映画『ピノキオ√964』とSWANS
SWANSには個人的な思い出もあります。20代の頃、失恋をきっかけに何か新しいことを始めたくて、とあるインディー映画制作チーム「ホネ工房」のボランティアスタッフをしたことがありました。
作品は中野武蔵野ホールで公開された『ピノキオ√964』というノイズまみれの映像作品。監督は“ゲロリスト”こと福居ショウジン氏。
スタッフとしてやったのは雑用中心。新聞配達の仕事のあとに参加していたので遅刻もありましたが、役者さんや音楽担当の方と会話を交わした記憶は鮮明です。中でも音楽の方とSWANSの話で盛り上がったことを今でも覚えています。もしかしたら、wikipediaに名前が出ていた長嶌寛幸氏だったかもしれません。
映画は“音が主役”のような作品で、映像はノイズのPVのような役割。そんな作品に関わったことで、SWANSのようなノイズ音楽に自然と親しみを覚えるようになったのかもしれません。
ちなみに当時自分がやっていたパンクバンドのデモを聴かせたこともあります。真面目にスタッフを続けていれば、もしかしてメンバーに誘われたのでは…?という淡い妄想も、今となっては甘酸っぱい思い出です。
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ノイズという美学
ナパーム・デスもノイズまみれのメタルですが、SWANSはそれ以上に“ロック以前のカオス”を音として表現している。ノイズをロックに仕立て上げる稀有な存在、それがSWANSなのです。
SWANSの音はYouTubeなどでも一部聴けます。Apple Musicで公式音源を聴くのもよし。気になる方はこちらからどうぞ:
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