町田町蔵『フェイド・アウト』と団塊世代のテレビ文化──INUの遺言としてのパンク

音楽

お前の身体はフェイド・アウト──町田町蔵、INU、そして団塊世代のテレビ讃歌

夏のお盆、団塊とテレビと中二病

お盆になると、親戚が長期滞在しにやってくる。そして居間では、テレビに釘付けになりながら時折奇声を発する団塊世代たちの「家族団欒」が始まる。その光景を眺めていた私は、ふとパンクバンドINUの楽曲「フェイド・アウト」の歌詞を思い出していた。

──町田町蔵がヴォーカルを務めた伝説のバンド“INU(犬)”。1981年のアルバム『メシ食うな!』に収録された、あの曲だ。

Apple Musicで試聴メシ喰うな/INU

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INU「フェイド・アウト」の歌詞と中二病の美学

「曖昧な欲望しか持てず/曖昧な欲望を持て余し/いつもお前はテレビに釘付け」──これは、まさに現代日本の老若問わず当てはまる“症例”だろう。

お前の体はフェイド・アウト 消え入り果てて行く
今日は昨日の続きで 明日は今日の続きか

やや“中二病”じみた言葉遣いながらも、町田町蔵の書く歌詞は、不思議なリアリティと痛烈な批判性を持つ。これは単なる若気の至りではなく、社会の構造に対する絶叫であり、異議申し立てである。

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アルバム『メシ食うな!』とその音楽性

INUのサウンドは、ピストルズとP.I.L(パブリック・イメージ・リミテッド)を思わせるノイジーで破壊的な構成。「聴くパンフレット」「叫ぶ評論文」のような鋭さがある。

特にP.I.Lのセカンドアルバム『Second Edition(通称Metal Box)』からの影響は濃厚で、ジョン・ライドンに対するオマージュとも言えるスタイルが感じ取れる。

Apple Musicで試聴➡️ Second Edition / Public Image Ltd.

町田町蔵とは何者か

町田町蔵(現・町田康)は、ピストルズに衝撃を受けてバンドを始め、やがて“INU”を結成。だがバンドは3ヶ月で解散。その後は詩人・作家として活動し、芥川賞なども受賞しています。

文学の世界でも“異端”としての存在感を放ち続け、パンク魂を文章に注ぎ続けています。

カラーテレビと団塊の思考停止

団塊世代は戦後の高度経済成長とともに、「カラーテレビ」を囲み、「明るい未来」を信じて生きてきた。しかし、今となってはネット時代に完全に取り残され、彼らの団欒はかつての亡霊のようにも映る。

「お前の体はフェイド・アウト」──町田の歌詞が突きつけるのは、ただ漫然と“過ごす”ことへの警鐘です。

お経にもある。「たとえ百年生きようとも真理を思わなければ意味はない。ただ一日でも真理に触れれば、それは永遠に値する」。テレビの前で時を溶かす者たちは、この言葉を噛みしめるべきでしょう。

まとめ:気ぃ狂って死ぬか、思考するか

「ええ加減にせんと気ぃ狂って死ぬ!」──アルバムのラスト、町田町蔵が叫ぶこの一言に、すべてが凝縮されています。

まともな神経を持つ者ほど狂気に近づく。世の中が狂っているからこそ、パンクは必要なのです。

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