昭和の漫画ベスト3|1970年代前半に子供だった私を虜にした名作たち

エッセー

【昭和の漫画】子ども時代を彩った1970年代前半の名作ベスト3

人は生まれ育つ中で、さまざまな記憶を塗り重ねていく。幼少期の純粋な感動も、時の流れとともに曖昧になっていく──。そんな中、私にとって今も強く心に刻まれているのが、1970年代前半に夢中で読んだ3つの漫画作品である。

まだ五十音を習ったばかりの小学1年生だった私は、絵本や図鑑、伝記よりも強烈に「本」という存在の魅力を教えてくれた漫画たちに出会った。

1. 『まことちゃん』(楳図かずお)

最初に私の心を鷲掴みにしたのは、楳図かずおのギャグ漫画『まことちゃん』だった。たまたま従兄弟と同じ名前だったこともあり、あるいは兄弟のいなかった自分にとって疑似的な“ともだち”のような存在だったのかもしれない。とにかく私はこの漫画に取り憑かれたようにハマり、何年も全巻を揃えて繰り返し読んだ。

購入した場所も方法も覚えていないが、当時は友達と漫画を寝転んで読むのが日常の一部だった。立ち読みも当たり前で、漫画本が遊びの中心にあった。

第1巻の冒頭を試し読みすると、その衝撃は今もなお健在だ。和式便所に座って絵本を読むまことちゃん、便器の中にはうんこ、そして姉ちゃんの顔がにょきっ…。この時点で只者ではないと直感した。記憶に焼き付いて離れないのは、モナカの餡を道中で食べ尽くしてしまい、代わりにうんこを詰めてしまう話だ。

2. 『魔太郎がくる!!』(藤子不二雄Ⓐ)

次に紹介したいのは、藤子不二雄Ⓐによる伝説的ホラー漫画『魔太郎がくる!!』。この作品は、当時の子供たちのトラウマとして語り継がれるほどのインパクトを持っていた。

転校生の魔太郎は陰湿ないじめを受けるが、その復讐の仕方が異様だ。彼はいじめっ子の名前を手帳に記し、自室で額縁に描かれた“悪魔大王”に祈りを捧げて復讐を実行する。悪魔の名は「サターン」。キリスト教のサタンなのか? そもそもこの子供はどこで魔術を学んだのか?──今読み返してもツッコミどころ満載の異色作だ。

しかし、私の心の奥底──いわゆる「無意識」や「リビドー」に影響を及ぼしたのは、まさにこの作品の不気味さと異常さである。

3. 『漂流教室』(楳図かずお)

3つ目も再び楳図かずお作品、『漂流教室』である。この作品は友達の家で読んだ記憶がある。学校ごと未来の荒廃した世界へトリップし、突如としてサバイバル生活に放り込まれる子どもたち。地球には巨大な穴が空き、外は暗黒と化し、巨大な人食い昆虫が徘徊している。

とくにハサミのような腕を持つ怪物に友人が切り刻まれる描写は、強烈すぎて今なお忘れられない。ギャグ漫画とは思えないほど恐怖の描写がうまい楳図氏。子供ながらに彼の線の強さ、極端な表情や暗闇の描写に震え上がった。

二作をランクインさせたのも納得である。楳図かずおは、子どもの脳裏にこびりつくような“記憶に残る絵”を描く、数少ない才能だと思う。

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