空の魚
東北の田舎は鳥の数がすごい。都会の空間が享楽と人工的騒音で満たされているなら、田舎は鳥の鳴き声で埋め尽くされている。鳥は空を泳ぐ魚だなどと言われるように、田舎だとここは人間の住む土地かはたまた鳥の住む土地かわからないくらいである。
イギリスの詩人ウィリアム・ブレイクはこのように書いている。
How do you know every birds that cut the airly way
are the immense world of delight, closed by your senses five?
「空を切って飛ぶ全ての鳥たちが 無限の歓喜の世界であると どのようにして君は知るのか 君の五感によって閉じ込められていながら?」
◯ウィリアム・ブレイク記事はこちら→【ウィリアム・ブレイク】の詩「天国と地獄の結婚」まとめ〜知覚の扉の章
鳴き声
その可愛らしい姿形もそうであるが親しみやすい鳴き声も、田舎だと空気のように空間を埋め尽くしている。これが不快を催す騒音であったとしたら大変なことだろう。しかしうるさいと感じる人はあまりいない。それはカラスみたいな嫌な鳥を除けば、彼らの鳴き声が快くしつこくないからだ。
鳴き声から調べれば実に大変たくさんの種類の鳥に囲まれて生活していることが、ネットで図鑑などを見るとわかる。しかしここではそれらのごく身近な鳥類の中でも、視覚と聴覚両方によって認識しやすい種について想うところを書こう。というのは鳴き声はよく聞いていても目にすることがあまりない鳥も多いからだ。バード・ウォッチングを趣味とする方が多いのも頷ける。可愛い聞き慣れた声の主を求めて河原や山を歩くのはさぞ楽しいことだろう、と思った。
お馴染みの鳥たち
まず誰もが思い浮かぶのは雀。チュンチュンと鳴きピョンピョンと跳ね、地面に落ちている何かを拾って食べている。雀は将棋で言えば歩、お金で言えば1円玉だ。
次に春先から夏まで人の家の軒先に巣を作るきわめて懐っこいツバメさんがいる。自宅にも毎年やってきて子供を産んでいく。
子供がウフフ!と笑っているように聞こえるツグミ。君、からかってるの?
前述したカラス。黒い不気味な鳥。虫に例えるならゴキブリ。汚い残飯を漁ったり路上の動物の死骸に寄ってくる。カラスがうるさく鳴いていると人が死ぬなんて不吉な噂もあるくらいだ。
2ちゃんねるでたまに話題になるキジバト。"ホーホッホホホー・ホーホッホホホー"というあの謎の声の主である。
畑の上空を滑空するトビ。タカやハヤブサと間違ってはいけない。
他にも色々いるんだけれども、今回2種類特筆する鳥がいる。すなわちシジュウカラもしくはハクセキレイ。それとヒヨドリである。
シジュウカラ
シジュウカラとハクセキレイは図鑑で見ると見た目がよく似ている。だがコンビニの駐車場や道路で尻尾を振っているのを見かけるこの鳥は、体がとっても小さいので多分シジュウカラではないかと思われる。白い羽に青黒っぽい縞模様でとてもおしゃれ、ピピッピピッとさりげなく鳴く。動きは雀的だが特徴として尻尾が長いこと、なんとなく品があること、懐っこく人の近くに来ることなどが挙げられる。飛び立つ時は小さな白い花びらが開いたようになるので、私たちの目を楽しませてくれる。
ヒヨドリ
そしてヒヨドリ。この鳥の陽気な鳴き声は人生のどん底にいるときほど鮮やかに聞こえる。声の元を辿っていくと木の茂みとかにいて、可愛い声の割に体は以外に大きく、ワイルドである。あたかも華奢な可愛い彼女のデルタの茂みがワイルドだった時のように。漢字で鵯すなわち卑しい鳥と書く。果物や畑の作物を食べるからだろう。またヒーヨヒーヨと鳴くのでヒヨドリという説もある。ネットで調べたらインコのように飼い慣らしている人も多くてびっくりした。元は平安時代の貴族のペットだったらしい。英語名はBrown-eard Bulbul、学名Hypsipetes amaurotisである。
ヒヨドリの叫びはイースター島のモアイを連想させる。空の彼方への憧れ・賛美のようだからだ。また仲間たちと遊んでいるらしい時などは、なにかこうふざけあってじゃれあっている子供たちのようだ。前世で無残な死に方をした魂が、ヒヨドリに生まれ変わって癒されているのであろうか。彼らの大きめの体からほとばしる力強い歓喜の声は、モーツァルトの音楽の旋律のようでもある。そんな風に感じるのはおかしいだろうか。
◯イースター島モアイ像についてはこちらの記事→【イースター島】〜モアイ像が建ち並ぶ幻想の島を夢見て
◯モーツァルトの音楽についてはこちらの記事→【モーツァルト】の音楽〜映画「アマデウス」でも描かれた天才の素顔