ダンテ【神曲】まとめ(6)〜「地獄篇」第13歌・第14歌・第15歌

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ダンテの全100歌ある「神曲」を基本三歌ずつ紹介していくシリーズである。

第13歌 自殺者の森〜ハルピュイーアイ

ダンテと案内人のウェルギリウスは地獄の第七の谷第2円へと入った。そこは自殺者の森と呼ばれる陰鬱な茂みだった。しかし木々には生命ある葉も付いておらず、ただ殺伐とした枝があるばかりであった。

節くれだった木々の間からはどこからともなくうめき声がして来る。ウェルギリウスに促されて枝のひとつをダンテが折ると、木は悲鳴をあげ苦情を申し立てた。これらの木々には自殺者の魂が封じ込められていたのだ。

話を聞くとかれらは最後の審判が訪れても再び肉体を纏うことはない。何故ならばかれらは(神の摂理によってではく)自らそれを捨てたからだ、というのだった。

ウィリアム・ブレイクが描いた「神曲」自殺者の森

陰惨な森の中をハルピュイーアイと呼ばれる、顔が女で体が鳥の生き物が飛びすさっている。ゲームなどでは若い女面の鳥だが、ギリシャ神話の上では老婆の顔をしたハゲタカである。そして習性はカラスに似ている。

第14歌 熱砂〜カパネウス

二人は第2円の界付近へと降る。目の前に荒涼とした砂漠が現れた。神の怒りによって灼かれ熱せられた砂の上には炎が降り注いでいた。

その場所で亡者らはなすすべなく身をもがいたり、逃げ場を求めて駆け回るのであった。かれらは苦痛が激しいたびに大きく喚いた。

その中にはアイスキュロス悲劇「テーバイ攻めの七将」にも登場する将の一人で、トロイ戦争にも加わったカパネウスがいた。この男は勇猛であると同時に、大神ゼウスの雷を嘲るほどに傲岸不遜であった。その代償として梯子で城壁を攻め登る時にゼウスの雷撃に打たれて死亡した。

ウィリアム・ブレイクのカパネウス

またクレタ島にそそり立つ巨人像のひび割れから涙が流れ、地獄の四つの河(アケロン、ステュクス、プレゲトン、コキュトス)が成り立っているという話がされる。そのうち三つはすでに渡られた。残るは深淵のどん底に流れるコキュトスである。

第15歌 第七の最後の谷

第七の谷の第3円では男色を好んだ人々が責めさいなまれている。当時の時代まで遡らずとも、男同士の同性愛は西洋のキリスト教国家では大罪であったのだ。ここにはダンテの先生であったブルネット・ラティーニがいた。

先生に対するだけあって作品の中で地獄に落としても丁重に扱われていて面白い。フィレンツェにあるダンテ像の隣にはこのブルネットの像が立っている。

 まとめ

なかなか読み応えのある「地獄篇」中盤。今回はブレイクの絵も紹介させていただいた。ブレイクは「神曲」の強烈で個性的な挿絵を多数描いている。またフランスの画家・版画家ギュスターヴ・ドレ(1832−1883)の「神曲」フル・イラストの本も出ているのでご参考まで。

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