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【ナグ・ハマディ文書】洋書レビュー〜全体的な感想と紹介(1)

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日本で『ナグ・ハマディ文書』の完訳を読むには5万円ほどかかる。しかし英約版の洋書では約3000円でコンプリート版が販売されている。

以下アマゾンの販売リンク↓:The Nag Hammadi Scriptures, edited by Marvin Mayer( HarperOne; International, Reprint, Revised, Updated版 (2009/5/26))。

言葉

「言葉」はかつて人間にのみ与えられたハイテク技術だった。それは名声のためでもなく、弁明のためでもなく、”人間”固有の特権として与えられた。

『ナグ・ハマディ文書』の作者たちは、ただ受けた”言葉”をパピルスに書き記した。用いられたのはエジプト末期の国語であるコプト語だった。

かれらはエジプトの古代都市テーベ(ルクソール)付近に居住していたらしい。作者たちはエジプトの知識を継承しつつ、ヘブライの聖なる文書を端整したように見える。

彼らの時代すでに「言葉」は悪用され歪められてしまっていたものと思われる。すなわち「言葉」をそれの持つ本来の姿に変えんがために、『ナグ・ハマディ文書』は書かれたと考えられる。

名声

そもそもいつからこうなったのか。詩を書いて賞をもらうとか、偉大な芸術を遺して生前はもとより例え死後にであろうと名声を求めようとか。

この世における名を求めない作者たちがここにいる。この世の生者に認められようとか評価されようとか、鼻から考えていない連中。人類の称賛や非難を超越した高貴な種族。

1945年、王家の谷近くの採掘場で「アラビアン・ナイト」または「ソロモンの鍵」のような、精霊が閉じ込められていそうな1メートルもある壷から文書群は発見された。

全部で13巻の皮でカバーされたパピルスの巻物にしたためられていた。ブローカーの手に落ちたり燃やされたりしながら一部が断片化したりもしたが、最終的にコプト博物館に全て収監された。

異端

これらの文書が一般人にしかもコンプリートで読めるようになるには長い月日を要した。また1500年以上の時を経て文書が現代の我々に届いたというのは、一種の奇跡である。

そして文書の内容は人類を超越したような知性(つまり称賛と非難を超えた芸術という意味で)によって、人間本来のハイテク技術「言葉」によって書かれている。

学者によって『ナグ・ハマディ文書』はグノーシス主義と分類される。またキリスト教のいわゆる正教に対しては異端と呼ばれる。

しかし『トマス福音書』日本語訳解説にもある通り、そもそも聖書の正典は人間が決めた法律で編纂・集結されたものに過ぎない。だからもしこの世が悪の支配者によっているのならば(グノーシス的な考え方だが)、正典とか異端という区分け自体信頼できなくなる。

変容

『ナグ・ハマディ文書』のグノーシスティックなフィルターにかかると、例えば創世記の造物主は”ヤルダバオト”となり、蛇は”インストラクター(教育者)”となる。

魂は”子宮”に、原初の巨人セツやノアの息子であるセムは偉大な救世主かあるいは預言者に取って代わる。ダビデ、ソロモン、アブラハム、モーゼなどは単なる名前に過ぎない存在で”笑い者””冗談”扱いされる。

ただし新約聖書のイエス・キリストは別格である。イエスは救世主だが名前が変形され、実体のないものとして登場する。すなわち光、スピリット、言葉として。

また祈願は”グロッソラリア”と呼ばれる異言を含み、意味不明の叫び声や母音文字配列によって形成される。

*以下次回以降に続く【ナグ・ハマディ文書】洋書レビュー(2)〜”グノーシス・知識”について

●参考→【トマスによる福音書】荒井献・講談社学術文庫〜レビュー

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