ダンテ『神曲』解説(1)地獄篇への序章と詩聖ダンテの構築美

ダンテ【神曲】まとめ(1)〜「神曲」全体および「地獄篇」の序

全34回にわたって『神曲』を超簡単・面白くレビューしていくシリーズ!記念すべき第1回目です 😀

詩聖ダンテ登場

イタリアの詩人ダンテ・アリギエーリ(1265–1321)の代表作『神曲』。初版の刊行は1472年ですが、実はこのタイトル、原題は単に「commedia(喜劇)」でした。「divina(神聖な)」が付いたのは1555年、後世の編集者による命名です。

ちなみに「ダンテ」で検索すると化粧品やバンド名が出てくる今日でも、彼の名前はちゃんとヒットする──それだけ彼が成し遂げた仕事は、今なお「俗人お断り」レベルのインパクトがあるのです。

『神曲』のすごい構造

この作品、内容が高尚で面白いだけじゃない。まず驚くのは、その構成の精密さ

ラテン語ではなく当時の俗語=イタリア語で書かれており、庶民にも読まれやすかった点がポイント。そして、ダンテはこれを17年かけて仕上げました。各部は「地獄篇」「煉獄篇」「天国篇」の3部構成。それぞれ33歌ずつで、第1部にだけ「序歌」があるため、合計はきっかり100歌。1歌あたりは三行連詩(テルツァ・リーマ)で統一されており、全体では14,233行という整然たる構築美。

まるで詩で描いたカテドラル。文系の芸術に数学的な秩序を持ち込んだ──そんな感じです。

あらすじ:プロローグ「森と獣と詩人」

舞台は1300年の聖金曜日の夜。中年のダンテが人生の迷いを象徴する「暗い森」にさまよい込むところから始まります。そこで出会うのが3匹の獣。豹、ライオン、メスの狼──バイオハザードの小ボスよりはマシですが、精神的にはかなり怖い。

この導入部だけで、壮大な地獄世界への扉がじわりと開いてくる不気味さ。とはいえ、原題が「喜劇(コメディア)」だったことを思い出してください。意外とユーモラスで、人間味のある場面も多いんです。

ウェルギリウスと地獄の旅へ

獣たちに道を阻まれ、明るい丘への道をあきらめたダンテ。その前に現れたのが、古代ローマの大詩人ウェルギリウス(ヴァージル)。『アエネーイス』でローマ建国神話を歌った人ですね。

彼はダンテの「詩の先生」として、死後の世界のガイドを務めるために登場します。恐怖に泣き喚くダンテを励ましたり、尻込みする彼を説得したり──現代人でいえば、カラオケに誘われて一度断ったのに、やっぱり行くことになったようなノリ。

ウェルギリウスの説得で腹をくくったダンテ、ついに地獄の深淵へと一歩を踏み出します──


▶第2回はこちら:
ダンテ【神曲】まとめ(2)〜「地獄篇」第1歌・第2歌・第3歌

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