安倍首相辞任の日に記した私的随想録|震災、引きこもり、聖霊、そして再生の記憶

日常

【随想録】あの頃、安倍首相が辞任した日のこと

※この記事は2020年、安倍晋三元首相が健康上の理由で辞任した当時に書かれたものであり、当時の空気感と筆者の私的な記憶を交えて構成されたエッセイです。

民主党政権の記憶

安倍首相の辞任は、ただ一人の政治家の退陣ではなく、私にとってはひとつの時代の幕引きでもあった。

この十年、日本も世界も、そして私自身も激動の中にあった。特に忘れられないのは、2011年の東日本大震災。そのときの民主党政権の対応には言葉を失った。

あの政権交代選挙、自民党が「もう二度と野党には落ちない」と誓ったような空気、思い出すと生々しい。私は当時、川崎・稲田堤に住んでいて、街角に貼られた「日本を、取り戻す」のポスターが通勤路にあった。毎朝、あの顔が無言で見送ってくれていた。

「お・も・て・な・し」と私の転落

滝川クリステルの「お・も・て・な・し」プレゼンをテレビで見た頃、私はもう精神的に限界だった。2020年の未来なんて、想像もしたくなかった。将来に夢が持てない自分がいた。

祖父の死をきっかけに、心がぽっきり折れて、会社も辞めた。東京のオフィス、神奈川のマンションを手放し、私は田舎に「帰った」のではなく、正直「落ちた」のだ。

引きこもりとは言わせない

“引きこもり”という言葉には定義がある。だから私はそれに当てはまらないように努力した。自営業を名乗り(実際そうだし)、アルバイトをして、地元の行事にも顔を出すようになった。

腰を痛めてからはもっぱら図書館で本を借り、ブログでレビューを書いてわずかに稼ぐ。このブログが、まさに今あなたが読んでいるこのブログだ。

言葉の感覚がよみがえる

若い頃、本気で作家を目指していた。捨てたと思っていた夢が、再び私の手の中に戻ってきた。読書と思索を重ねる中で、かつての思考法や感覚が甦ってきた。

英語も仏語も読解力が復活し、今や私は以前以上に読める。思考し、書く力も戻った。長い会社勤めで失った自分自身を、やっと取り戻せた気がした。

鳥と聖霊とコロナの時代

今、私は鳥の言葉がわかるようになった。これは若い頃にはなかった力だ。宇宙の電磁気力の奥に、霊的なものが存在するという確信も得た。

そんな時に襲った新型コロナ。全世界がざわつき、東京五輪は消えた。代わりに天変地異が連日ニュースを騒がせていた。

火球、異臭、山火事、洪水、爆発――そんな黙示録的な夏の日、日本の首相が辞任した。

安倍晋三という時代の終わり

私はこの人はよく頑張ったと思う。歴代最長の在任記録というのは、間違いなくひとつの勲章だ。

外交手腕、場の空気を読んだ発言、首脳会談での立ち回り。B型らしいアドリブの利いた会話術で、何度も危機を乗り切ってきた。

そんな安倍首相が退陣した日、確かに一つの時代が静かに終わったのだった。

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