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谷崎潤一郎訳『源氏物語』「夕顔」巻を読む|幽玄と怪異が交錯する古典の美学

幽玄なる『夕顔』巻:谷崎潤一郎訳による美意識の継承序論平安文学の頂点たる『源氏物語』は、その幻想的な語り口と幽玄な美が今も人々を惹きつけてやまない。特に第四帖「夕顔」は、主人公光源氏と〈夕顔〉との儚い恋物語が夜の闇の中で悲劇的に結実する、い...
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三島由紀夫『命売ります』レビュー|軽妙な仮面の下に武士道が見え隠れする小説

三島由紀夫『命売ります』レビュー|軽薄な仮面の裏に潜む“死”の思想三島由紀夫の小説『命売ります』は、いかにも彼らしいタイトルである。だがその内容は一見して驚くほどポップで読みやすく、文体も軽妙。発表媒体は1968年の「週刊プレイボーイ」──...
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三島由紀夫『獣の戯れ』を解説|黒いスパナと倒錯の三角関係が描く愛と暴力の儀式

三島由紀夫『獣の戯れ』レビュー|黒いスパナに込められた灼熱のエロスと死はじめにしばらくぶりの三島由紀夫レビューである。本作『獣の戯れ』は以前に読了していたが、なぜかレビューを書かずにいた。未レビューの同時期の作品には『美徳のよろめき』『青の...
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三島由紀夫『夏子の冒険』レビュー|修道院と熊狩りをめぐる恋と精神の冒険譚

三島由紀夫『夏子の冒険』紹介・レビュー|修道院を飛び出し熊を追う恋愛冒険小説概要『夏子の冒険』は1951年に発表された、三島由紀夫の第7長編小説。地味なタイトルとは裏腹に、その内容は非常に独特かつ大胆な構成を持つ恋愛冒険小説です。戦後間もな...
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三島由紀夫『禁色』感想・紹介|戦後文学と同性愛の虚無を描く問題作

三島由紀夫『禁色』感想・紹介〜戦後文学と性愛の境界を問う長編小説はじめに『禁色』は三島由紀夫による戦後初期の代表的長編小説であり、その題名は平安時代において高位の官人しか着用を許されなかった「禁色(きんじき)」の衣装に由来します。ただし、本...
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三島由紀夫『潮騒』レビュー|純愛と神話が交錯する歌島の物語

三島由紀夫『潮騒』レビュー|歌島に響く純愛の“しおさい”舞台:三重の孤島・歌島物語の舞台は三重県沖に浮かぶ小さな島、歌島。現在は神島と呼ばれ、八代神社が祀られる観光地として知られている。この小説が発表されたのは1954年、戦後わずか9年後と...
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三島由紀夫『肉体の学校』レビュー|ゲイ・バーから始まる洒脱な恋と別れの物語

三島由紀夫『肉体の学校』を紹介|ゲイ・バーから始まる自由な愛の物語洒落た小説と錯覚する映画的テンポ『肉体の学校』は三島由紀夫の長編ながら、とても軽快なテンポで読める作品だ。タイトルから過激で艶めかしい物語を想像してしまうが、実際はむしろ小粋...
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三島由紀夫『豊饒の海』レビュー(後編)|「暁の寺」「天人五衰」の要約・考察と輪廻の崩壊

三島由紀夫『豊饒の海』レビュー(後編)〜「暁の寺」「天人五衰」の要約・感想と最終章の謎●前編はこちら:三島由紀夫『豊饒の海』レビュー(前編)|「春の雪」「奔馬」の要約・感想と転生の思想■第3巻『暁の寺』〜転生と欲望の交錯本作の中で筆者が最も...
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三島由紀夫『豊饒の海』レビュー(前編)|「春の雪」「奔馬」の要約・感想と転生の思想

三島由紀夫【豊饒の海】まとめ(1)〜「春の雪」「奔馬」レビュー・解説・感想三島由紀夫が1965年から1970年、自決の日までをかけて執筆した大長編『豊饒の海』は、全4巻からなる壮大な文学的実験である。構想は輪廻転生を主軸に据え、日本的美意識...
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 【三島由紀夫】『音楽』解説|“音楽が聞こえない”女性の症例と戦後の闇

【三島由紀夫】『音楽』解説|“音楽が聞こえない女”と戦後の闇をめぐる精神分析小説またしても、圧倒的な一冊に出会ってしまった。読後の昨夜から、眩暈・吐き気・耳鳴りが続いているのは偶然か? 三島由紀夫という作家の力に、ただただ圧倒されるばかりだ...