志(こころざし)
一級建築士の資格を取得すると何が変わるのか。資格を取ればバラ色の未来が開ける——そう信じて多くの人がこの超難関に挑みます。会社員であれば昇進や手当アップが期待でき、資格にかかった費用もすぐ回収できるかもしれません。
あるいは、生まれながらにして「建築の道に進むべくして進んだ」と言えるような、使命感を持った方もいるでしょう。
では、なぜ人はみな遊びに出かけるお盆やゴールデンウィーク、そして仕事終わりの夜の時間を削ってまで勉強するのでしょうか。決して安くはない学費を払い、眠気や疲れと闘いながら勉強を続けるのは——「一級建築士になりたい」という強い思いがあるからに他なりません。
その思いがある人なら、試験直前の不安の中でも最後まで粘ることができます。運でさえも、努力を続けた人に味方するのです。
取ったあとの現実
もし会社勤めを続けるのであれば、資格取得はひとつの通過点となります。着実に仕事を重ね、キャリアを築いていく道は安定しています。
一方で独立開業を目指す場合は、すべてが自分の責任となります。設計だけでなく、実施設計・仕上げ・現場監理まで一手に引き受けることになります。ここで言われるのが、「一級建築士にもピンからキリまである」ということ。せっかく取得した資格を活かせるよう、キリにならない努力が必要です。
法令違反や業務怠慢などがあれば、最悪の場合は資格剥奪もありえます。一級を取って「終わり」ではなく、「そこからがスタート」なのです。
独立開業のリアル
建築士事務所を開設するにあたり、多額の資金が必要なわけではありません。自宅の一角でも始められますし、必要なのはパソコンと製図のスキルです。
ただし、開業には「管理建築士講習」の修了が必要です。また、業務報告書や帳簿管理、官公庁からの抜き打ち調査への対応など、こまごまとした事務作業も伴います。
料金設定には国土交通省の告示が参考になりますし、設計報酬や業務範囲について明文化することで、トラブルを避けやすくなります。
オススメ本『最高の建築士事務所をつくる方法』
独立を目指す方には、湯山重行著『最高の建築士事務所をつくる方法』が大変参考になります。
人脈作りから営業、実務の進め方まで、経験者でなければ書けない実践的な内容が満載。資格を取る前、取った直後の方にこそ読んでほしい一冊です。
終わりに
「一級建築士を取ったあと、何をしたいのか?」——この問いに明確に答えられる人は、幸せです。
自分の建築人生に明確なビジョンを持つこと。資格取得の先にある未来に思いを巡らせること。それが、長く建築と向き合うための第一歩になるはずです。
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