アリストテレス「動物誌」に続いて、全集収録の「動物運動論」「動物進行論」「動物発生論」について一緒くたにレビューする。他に「動物部分論」なる本もあるがそれはまた別の機会に。
◯「動物誌」はこちら→アリストテレス【動物誌】の魅力〜驚異に満ちた地球の生き物たち
「動物運動論」
動物は感覚を持つという点で植物と異なる。アリストテレスは宇宙が魂を有するということについて、師プラトンが「ティマイオス」で書いた内容に同意しつつも、多数の項目で異論を唱える。
動物を動かすものが魂であるにせよ霊魂であるにせよ、気息によって動かされるのであると説く。なぜならあらゆる生き物は呼吸するからである。そしてその起動原因は心臓である。
動物の動きは宇宙の運動と対応し、すなわち不動の点と可動部分とで構成されている。動物の関節はそのように交互に連結されているためである。
◯「ティマイオス」はこちら→プラトン【ティマイオス】おぼえがき・レビュー〜重要箇所をわかりやすく紹介
「動物進行論」
「動物部分論」で生き物には上と下、前と後ろ、右と左があることを分析した。これは宇宙のそれとは違う意味なのであり、例えば植物にとっての上は根っこなのである。植物の口に当たる部分はそこだから。
動物は基本的に前に向かって進行するが、全く動かないものも存在する。またカニのように横に進むものもある。足の数は基本的に偶数であり、その方が奇数であるよりも進むのに都合が良いからである。
人のように唯一直立した2足の動物は別格であり、獣どもは4足、鳥のように2本足で手の代わりに翼を持つもの、魚のようにヒレを持つもの、ムカデなど多足のものや蛇や鰻についても語られる。
人以外の動物はすべて子供を育てるためか、食物を集めるために進むが、人だけはそうではない。
「動物発生論」
動物は基本オスとメスの交合から発生するが、単独で生ずるものもある。またメスの胎内で完成されて産まれるもの、卵で産み落とされてから完成するもの、湿気から生ずるものなど様々である。
発生論については以下の有意義な記述を引用するに止める;
「当然のことであるが、すべての動物の妊娠と発生と一生の期間は、本来周期によって測られるようにできている。『周期』というのは、昼と夜と月と年とこれらによって測られる期間のことであり、さらに空の月の周期である。
空の月の周期とは、満月と新月およびこれらの間の期間の各2分期である。」「これらの過程の始めと終わりの限界を決めるものはこれらの星の運動である」
◯参考→【アリストテレス】哲学:ばっさり解説〜天動説と宇宙論
まとめ
マンディアルグの小説「大理石」の”ヴォキャブラリー”では、「国家」が盥に入ったたくさんの足で表現されている。国のみかその中にある会社、学校、団体、すべて人間の足で埋め尽くされているという図だ。
駅などの交通機関や街の人混みを見てみよう;それらの光景を構成しているのは、すべて進行すなわち歩く2本の足である。そして足は動物としての原理に従って進行している。
次に人を含む生き物の発生について。動物の体は宇宙から元素を借りたものであり、死ねば体を構成していた元素を宇宙に返還する。借りたものは返さねばならない。
ある時親が食った飯が精子または卵子になり、その種が人になる。ひたすら親は飯を食い続け、胎児は成長し生まれ出る。人体は設計された形に向かって増大・成長し頂点に達すると減少・老化へと移行する。
定められた時が来ると体は生命を手放し、自然の中へ分解、元に戻る。自然から発生し、自然へ還る;動物が生まれて死ぬということは、こういうことである。
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