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【閉ざされた城の中で語るイギリス人】マンディアルグ作品から考察する精神的な「閉鎖」についての論考

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題名

「閉ざされた城の中で語るイギリス人」はマンディアルグのポルノグラフィック小説であるが、発表当初の題名は単に「イギリス人」、さらに下書きの段階では主人公の名をとった「モンキュ」だった、と作者はガリマール版の序文で語っている。

作者は発禁処分を受けたこの作品をピエール・モリオンなる偽名で出した。ちょうど「O嬢の物語」の、ポーリーヌ・レァージュのようなものである。作家は”一生に一回はとても恥ずかしくて名前が出せないような作品を書くべきだ”とも言っている。

【城の中のイギリス人】マンディアルグのエロティシズム小説・澁澤龍彦訳紹介

張り形

さてマンディアルグはそのような作品を見事に出した。私ももし小説家でそのような機会が与えられたなら、次のような場面を書くことだろう:

”Gは下男3名に命じて13歳のVを床に固定された椅子に縛り付けた。Gは少女を自由に出来る立場になった。獲物の母親である33歳のFは、ブラジャーとパンティだけを身につけて杭に固定され、無理やり光景を見させられた。

Gは直径30センチの張り形を手に取り、Vのむき出しの肛門にねじ込んだ。少女は痙攣し失禁したが、命までは無くさなかった。”

ほとんど「イギリス人」の真似になってしまった。ではもう一つ真似を:

”下男の一人が今度は4歳の女の子を連れてきた。Vの少し歳が離れた妹で母親の娘だった。別な下男が父親を引っ張ってくると、Gはいきなり釘が刺さった棍棒で父親の顔を殴った。見る間に顔面が腫れ膨れ上がった。

次に母親が見ている前で事前に肉の味を覚えた2匹の猟犬が連れてこられ、女の子は犬の食い物にされた。床一面に血と肉と内臓がばら撒かれ、犬どもは骨をしゃぶった。”

剃刀

「イギリス人」だと母親の前で生まれたばかりの赤ちゃんの顔と体にカミソリを入れ、皮を剥ぐという手術が行われる。こちらの方が残酷だと思われるのだが読者の皆さんはどう感じられるだろうか。

フランスのポルノグラフ小説の作家の子供に対する憎しみの例は、サドの「ソドム120日」やマンディアルグの「大理石」にも顕著に現れている。サドは言うまでもなく「大理石」では、”ヴォキャブラリー”で子供を飛ぶ跳ねるコルク栓で表したり、”死の劇場”で背中合わせに磔にされた二人の妊婦の巨像などを登場させている。

「ソドム120日」の場合は妊婦を胎児ごと処刑するのはほぼ茶飯事である。サド侯爵の人類繁殖に対する根強い憎悪が窺われる。

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サド

サドが出たついでだが、小説に出てくる4人のリベルタンと犠牲者らは、スイスの”黒い森”の奥深くにあるシリング城に文字通り閉篭もるのである。「イギリス人」の隠遁者モンキュも、満潮になると道が通れなくなる海の上の要塞に住んでいる。

このように作家が自由に夢の中で欲望を解き放つには、ヘルメティックな封印が必要である。これが精神の封鎖・閉鎖なのである。仏教の開祖である尊師はこのように言っている。”亀が甲羅の中に手足を引っ込めるように、自己の粗雑な想念を修めよ”

このように心が純粋さに至るための閉鎖は、外部の汚れを逃れ避ける必要以上に不可欠な手順なのである。

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