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映画【アレクサンドリア】レイチェル・ワイズ演ずる美しい女哲学者

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前日エジプトはアレクサンドリアの女学者だったヒュパティアについて書いたら、映画そのものも観たくなってしまい動画レンタルで視聴した;感想はかなり「良い」。前観た時と違って天動説や宇宙論のことも勉強中だったから、余計に楽しめた。

決して真剣に歴史をなぞっている訳ではないので、そんなに正確な再現を求めなくてよい。ああ、こんなこともあったと考えられるだろうな、くらいで上等と思えば結構楽しめるし、世界史の勉強にもなる映画。

●前の記事→古代アレクサンドリアの悲劇の女学者 ”ヒュパティア” を回想する

登場人物

まず歴史上の出来事に対して映画で脚色している部分を挙げよう;ヒュパティア処刑のもととなったキュリロス主教の弾圧の時、キュレネの主教となって登場するのはかつての生徒シュネシオス。この俳優はアメリカのTVシリーズ「高い城の男」でフランク役の人、少しブラッド・ピット似。

かつて生徒でヒュパティアに愛を捧げ、返事に生理の血のついたハンカチをもらったオレステスは、成長してアレクサンドリアの長官職となる。それでもずっとヒュパティアを想っている。この俳優はスター・ウォーズの新作でポーの役をやってるオスカー・アイザック。

あともう一人重要な客付けがある;ダオスという奴隷の若者だ。これは完全なフィクションの設定だが、この映画をすごく面白いものにしているので、紹介しておこう。

美しい哲学者

ダオスはヒュパティアの奴隷で学校で教える時補助などをやっていたが、講義をよく聴いていたのでなかなか頭が良く、またプトレマイオスの天動説の模型を作ったりなどして彼女に褒められた。ヒュパティアに対し、いわば未成年の年上女性への憧れの感情を抱いている。

彼女自身は美しく頭も良かったが、学問に熱心すぎて恋愛や結婚は眼中にない;いや哲学者である以上、男の所有物になどなれるわけがなかった。それはアレクサンドリア最後の図書館長だった父、テオンも了解していた。

だからオレステスが広場で彼女の求婚した時も、ダオスは心の中で彼女が誰のものにもならないようにと神に祈る。その結果は前述の通り。ダオスはふらふらと信念が定まらない若者を演じているため、ヒュパティアに忠誠を尽くすかと思えば、キリスト教にはまって家を出てしまう。

ヒュパティアの死

暴動によりアレクサンドリア図書館が壊され、父が死んでしまったがヒュパティアは細々と研究と講義を続けていた。だが徐々に彼女に最後の時が迫っていた。この町にはもはやキリスト教を受け入れない人間が住む余地はなくなってきていた。

総主教キュリロスがヒュパティアを名指しで糾弾し、長官オレステスが反発するとキリスト教徒が彼に投石した。傷を負ったオレステスは戦争を始めることを決めた。だが敵は彼の弱み・愛するヒュパティアを殺すことに決めた。

歴史上では彼女は裸にされた後、生きながら牡蠣の殻で肉を削ぎ落とされ、”魔女”として火で焼かれたそうであるが、映画は手心を加えてダオスが彼女の首を締めて殺し、気を失ったことにしてあとは切り刻まれるという話になっている。

オレステス、シュネシオス、ダオス。かつての生徒で心の底で熱い思いをヒュパティアに寄せる3人の男たちの誰も、彼女を救うことはできなかった。

まとめ・感想

アリストテレス教義、プトレマイオスの説、そして17世紀の”ケプラーの法則”なんかも盛り込まれており面白い。天文学史上でも最初の頃に地動説を考えたアリスタルコスの名前も出てくるし、なかなか本格的。ところどころカメラ・アングルがアレクサンドリアから宇宙に上昇し、地球を上から眺めるなど、この監督は古代天文学を良く分かっている。

キリスト教徒は隣人愛を説く善人ではなく獣のように凶暴なカルト集団的に描かれている;だからそこは覚悟して観てほしい。

主演女優レイチェル・ワイズは相変わらず綺麗。さすがダニエル・クレイグの奥さん。少しだがセクシー裸体も見れる。あと映画の原題は”Agora"で「広場」の意味である。

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