哲学

【ATALANTA FUGIENS】「逃げるアタランテ」EMBLEMA IV.〜兄と妹を結合させ彼らに愛の杯を呑ませよ

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"Conjunge fratrem cum sorore et propina illis poculum amoris."

近親相姦

兄と妹の交尾は近親相姦と言ってキリスト教上の罪である(日本にこれを禁ずる法律は特にない)。しかしマルキ・ド・サドが捲り上げて演説している如く、もし近親相姦が罪ならばどうやって原人のアダムとイヴの家族が子孫繁栄したのだろうか。

このように当時のキリスト教一般社会では罪とされるのだが、哲学者の婚姻はむしろ近親相姦を推奨する、と本は言っている。なぜなら似た者同士の結合は似ていないもの同士の結合より優れた果実を生ずるからなのだと。

創世記

このように錬金術の講義もエピグラフも作者が何を言いたいのか意味が分からないので、例によって筆者独自の解釈・推論を推し進めたいと思う;アダムの家族が近親相姦で増殖したという考えは正しい。すなわち兄と妹は生けるものたちの母・イヴの子供たちである。

『創世記』によると、善悪の知識の木の実を食べるようにイヴを欺いた蛇(インストラクター)は、ヤルダバオト(創造神)に呪いをかけられた。ヤルダバオトは人間を無知のままに留めておきたかったのだが、蛇が彼らの目を覚させた。

ヤルダバオトはイヴの子孫と蛇の子孫の間に敵対関係を置いた。要するにイヴの子孫はイヴの子孫と近親相姦させ、蛇の子孫は蛇の子孫と近親相姦させろ、という忠告ではないか。イヴの子と蛇の子を交配させてはならないのである。

愛の杯

次に”愛の杯”についてだが、愛はヴェヌスのそれすなわち官能と欲望の愛である。なぜなら杯は子宮を象徴するのだからである。また教会の儀式で使用されるキリストの血をも意味するかもしれない;いずれにしてもこの杯は血のように赤いワインであると考える。

絵は若い男女が強く衣類を来たまま抱き合い、口づけして野原に立っており、脇にどこかのおっさんが杯を掲げて二人に向かって乾杯のような仕草をしている。このおっさんは誰なのか、おそらく風貌から言って哲学者だろう。

まとめ

イヴの子孫は同じ始原・一人の父から出た皆兄妹である。人の子たちは蝮の子供らと交わってはいけない;もしそうするならば異種混交により畸形の怪物が生まれるであろうから。

性欲は愛の女神の意に適う、最も高貴な最も自然な欲求であるから、自然を損なうことなく兄と妹の愛を助長させ激しく酔わせるが良い;これこそが哲学者の手段である。

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