【泉鏡花『義血侠血』レビュー】滝の白糸の悲劇と禁じられた純愛を解説

小説

難解な原作を、読者に代わって映画との比較を交えながら簡単に解説します。

*参考YouTube動画→The Water Magician / 滝の白糸 (1933) (EN/ES)

ストーリー

一行は「人力車より速い」という宣伝文句に惹かれて、乗り合い馬車に乗り込みます。次の道駅まで急いでくれと御者をせっつく乗客たち。

そこへ人力車の車引きたちが競争心を燃やし、数人がかりで馬車を追い越してしまいます。

怒る乗客たち。そんな中、美しい女が御者に金を握らせ、「あの人力車を追い抜いて」と頼みます。御者は血が上り、無理に馬を走らせた結果、車輪が壊れてしまうのでした。

意気消沈する中、女の挑発に乗った御者は、馬を馬車から外し、彼女を背に乗せて全速力で駆け出します。茶屋にたどり着いたとき、女は気絶──。そこから二人の運命が交錯し始めます。

美人芸人・滝の白糸

あの御者、金さんに心惹かれた女は、実は旅芸人一座の水芸師「滝の白糸」。彼女の芸は金沢で大評判となり、連日満員御礼となっていました。

ある晩、月を眺めに散歩に出た白糸は、橋の欄干で寝ている青年を見つけます。それはあの金さんでした。

「女房も情婦もいない」という金さんに、白糸は思い切って迫ります。「なら私を可愛がってくださいな」と。

女の貢ぎ

金さんは、あの件で会社をクビになり、検事になる夢を抱きながらも、学費が払えずにいました。

白糸は「私が貢ぐから、いつか女房にして」と懇願。ついに金さんは決意し、東京で学業に励むことになります。

出刃打ち事件

しかし、華やかな水芸も冬場は客足が遠のき、仕送りは苦しくなる一方。ようやく半年分を貯めたある夜、白糸は賊に襲われ、金を奪われます。

絶望のあまり、賊が落とした出刃包丁を拾い、盗みを働こうと民家に侵入──。騒ぎで目覚めた旦那を刺し、金を奪って逃げ出しますが、着物の袖がちぎれ、証拠を残してしまいます。

犯行の審判

白糸と賊は捕まり、裁判にかけられます。担当検事として現れたのは、かつての金さん。

彼の尋問に耐えきれず、白糸は真実を語ります。 貢ぎ続けた金を奪われ、絶望から犯罪に至ったのだと。

裁判の結果、白糸は死刑判決。金さんはその後、自責の念に耐えられず自殺します。

まとめ・感想

この小説、最高です。

渋い味わいのある深い文体で、読むたびにかっこよさが沁みてきます。一度で理解できなくても、段落ごとに繰り返し読めば、やがて世界が開けてきます。

泉鏡花の文体とは、そういうものです。 澁澤龍彦と三島由紀夫でさえ「難しい」と語ったほどなのですから。

映画版は、陰影の美しい映像が魅力。ただし展開が原作より冗長で、俗悪な改変も目につきます。それでも、物語理解の助けにはなるでしょう。

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