ダンテ【神曲】まとめ(27)〜「天国篇」第10歌・第11歌・第12歌
ダンテとベアトリーチェは天国界の第4層、「太陽天」へと昇る。ここは知の象徴、輝ける恒星・太陽の中に宿る賢者たちの領域である。
第10歌〜光の輪に踊る賢者たち
旧約の「創世記」にも記された「時のしるし」としての太陽に到達したダンテたちは、そこでまばゆい光の魂たちに迎えられる。
彼らは冠のような円陣を描きながら合唱隊のように回転し、その一人がカトリック神学最大の巨匠──トマス・アクイナスであった。
トマスは『神学大全』を著した中世最大のスコラ学者。彼は輪の中の賢者12人を次々と紹介し、天上の知の讃歌を奏でる。
やがて太陽天には、中世の教会の時計の音のような、調和のとれた天の響きが鳴り響いた。
第11歌〜アッシジの聖人フランチェスコ
トマス・アクイナスが語るのは、「清貧の聖者」と呼ばれるアッシジの聖フランチェスコの物語。
裕福な家に生まれながら、乞食に自らの金と衣を与え、清貧と愛の道を歩んだ彼の人生は、キリスト教の理想そのものだった。
ちなみにこのフランチェスコを描いた映画に、1989年の『フランチェスコ』がある。主演はプレイボーイ俳優全盛期のミッキー・ローク。筆者は当時、歌舞伎町でこの映画を観たのだが、彼の妖しくも情熱的な聖人像に深く印象を受けた。
ミッキー・ローク余談(脱線注意)
かつてはセクシー系の色男、今では“怪演”俳優──そんなミッキー・ロークは「ナイン・ハーフ」「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」「エンゼル・ハート」などで80年代を席巻。
俳優として絶頂期を迎えるも、90年代に一度人気が下火に。だが2008年『レスラー』で奇跡の復活を遂げた。人生に何度も挫折と再生が訪れる彼の姿には、どこかフランチェスコ的な魂を感じるのだ。
第12歌〜ボナヴェントゥラと第二の光輪
トマスの語りが終わると、太陽天には第二の光の輪が現れる。そこにも12人の魂たちがいて、その一人がボナヴェントゥラであった。
13世紀の神学者であり、フランチェスコ会を代表する知性。彼はトマスとは異なる神学の系譜に属しながら、共に天の知恵を語る存在として登場する。
ボナヴェントゥラは、フランチェスコ会の内部抗争や精神の混乱を語りながら、第二の光輪に集う聖なる魂たちを紹介してゆく。
まとめ:太陽という名の智の天
地球を照らす太陽──それは単なる天体ではなく、神の意志を伝える光そのものでもある。
自ら輝く恒星である太陽は、まさに神の「創造の証し」。この光の中に賢者たちを配置したダンテの詩的直感には、深い象徴性がある。
知と信仰が交差するこの太陽天に、私たち読者もそっと目を細めて耳を傾けてみよう。
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