『アルマゲスト』『地理学』などの大著で知られるアレクサンドリアの天文学者、クラウディオス・プトレマイオスの古代占星術書『テトラビブロス』の紹介と感想。
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洋書の読み方
この本の邦訳は存在しないので英語の洋書のレビューになる。買ったのはアメリカで製本された120ページちょいの解説序文など一切なしのペーパーバック;アマゾンの安い洋書は時折PDFを打ち出しただけのような粗悪品があったりするが、印字もはっきりしていて読みやすかった。
まず題名『テトラビブロス』は”四つの書”という意味で、本文も4巻からなる;しかも各章節ごとに目次が付され内容ごとに段落分けがしてあるので、久しぶりに英語の本を読んだ筆者もさほど苦労なくして読み終えることができた。
ただし辞書やケータイは手元に置いていたがわからない単語が出てきてもよほどでなければ引かなかった。大体英語なんてものは日常生活に溢れかえっており、アメリカのネトゲをプレイしたり攻略サイトを見る程度の能力があれば十分と思われる。
にも関わらずプトレマイオスの本には学術的な専門用語がかなり出てくるので、前後関係の文脈や文字の配列などからそのような単語の意味は推測した。本レビューはそういった読書環境によるものであることをまず了解していただきたい。
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天体の影響力
占星術、星占い、これらは小学校あたりで出会う”遊び”である。たとえば好きな女の子との相性を占ったり、自分の人生に待ち受ける運命などをあれこれ想像するのに役立つ。誰でもご存知のように人は”何年の何月何日の何時”に生まれたと記録される。
この”時間”というものは天体の運行によって規定されている以上、誕生の時に天体は生き物に様々な影響を及ぼしているわけであり、プラトンが『ティマイオス』や『国家』で語っているように人の一生の長さとかクオリティーは生まれた時にすでに決まっているのである。
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太陽と月
天体が地球および全ての生き物に”影響”を与えているということの証明は、一番はっきり見えてわかりやすい太陽について考えてみればすぐ分かる;まずこの天体が東に登らなければ朝はやってこない。やがて太陽は南中点の最大高度に向かって上昇しつつ、地上をどんどん明るく温めていく。
夜の湿り気を乾かし、冷えた大気を熱していく。南中点を通過すると西へ向かって下降していき、熱と光も少しずつ減っていき、最後の光芒を放って地平線に沈む。夜になり、空気は冷える。風は様々な方角から吹いてくる。
季節は太陽の通り道が高くて長いほど暑く、短くて低いほど寒くなる。次に目立つ天体、すなわち月もどのような影響力を地球に及ぼしているか、ネットで調べればすぐ出てくる。この二つの天体が大きな作用力を有しているように、他の5つの惑星である水星・金星・火星・木星・土星とその上の数かぎりない星座群もまた、
確実に地球に影響を及ぼしているということだ。『テトラビブロス』は天文学の神とも呼べるプトレマイオスが、これらの星の位置・配列からこれから生ずる出来事を預言する方法を”哲学的に”論じた本だ。したがって占星術と聞いたとて小学生のお遊びとは異なる。
ゾディアック
著者は『アルマゲスト』が永遠かつ不動の掟である数学に拠り所をとったようには、この本は確固とした根拠を持つことはないだろうと、前置きで述べている。だから読者は”ありそうな”ことであるとあらかじめ承知の上で読み、そこから何らかの啓示を受ければ良いのだ。
天球を真東から真西へ赤道が大円を描いており、それと交わるように太陽の通り道である黄道がある;この大円を12等分した30度ずつの角度にはそれぞれ太古の昔から人々が認めてきた12の星座があり、これが星占いで”何座生まれ”と呼ばれる12宮である。
12宮には12の動物がいる;そのため黄道12宮は獣帯と言われる。各動物には”サイン”が決められており、角度に応じ良い影響・悪い影響を相互に及ぼし、それに太陽と月、恒星天の星座が絡み合う。”サイン”を読み取ることで、これから起こるべきことを預言することができるのだ。
最後にこれほど素晴らしい本を書いてくれたプトレマイオスの偉大なる知性を礼賛し、この記事を終わる。
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