【TETRABIBLOS】プトレマイオスの占星術書を読む〜文語調による紹介と感想

天文学

古代占星術書『テトラビブロス』の紹介

著者プトレマイオスと背景

古代占星術の原典と崇めらるる『テトラビブロス』を邦訳にて拝する日、ついに来たりけるとは感無量なり。著者クラウディオス・プトレマイオスは紀元後二世紀の学者にして、アレクサンドリアにて天体観測をなし『アルマゲスト』を撰述したること知らる。斯くして天文学書『アルマゲスト』と対を成す占星術書『テトラビブロス』を彼は遺しぬ。天文学と占星術が未だ一なる時代、宇宙と人間界を結ぶ思想の大成と称すべし。邦訳をなしたるは恒星物理学に長じし学者なり。彼の附せる『テトラビブロス概略』を読むに、各巻何を論ぜんとするか把握し易く、有益至極なり。

占星術の正当化と運命論

本文冒頭、占星術は有用なるものながら、運命論にあらずと力説す。すなはち、絶対的神命によりて万事前もって定められたるが如く考ふべからず、いかなる障害あらばこそ必然に起るべしと説くなり。往時これを決定論と見なししに、実に意外なりけりと驚嘆せざるを得ず。かくてこの章の後には、惑星・ハウス・アスペクト等の具体説が続かむ。

占星術の基本概念

『テトラビブロス』は古来占星術理論と実践を体系的に述べし書なり。太陽・月および七惑星、黄道十二宮・ハウス・アスペクト等諸概念を詳説し、また、天体・星座が人の運命や天変地異に及ぼす影響、その解釈法に至る指針までも与ふる点、殊に貴し。ゆゑに本書は占星術史上重要なる一書とされ、中世ヨーロッパ・イスラム世界においても多大なる影響を伝えしこと知らる。

日月の働き

プトレマイオス曰く、太陽は地球の季節および日々の運行に最大なる影響を及ぼすものなりと。月は地に最も近き天体なれば、その光の増減に応じて河川は満ち干し、潮は変転し、植物・動物は生長と衰退を繰返すと説く。ゆゑに占星術では日月二大星を特に重んず。伝統にて太陽は獅子宮を、月は蟹宮を治むるとされ、それぞれ人の自我・情感を示すしるしとなるなり。

黄道十二宮

黄道十二宮とは、天の黄道(太陽の通り道)を春分点より東へ三十度ずつ十二等分し、各時期の星座に名付けたるものなり。占星術では、十二宮各々に火・地・風・水の四元素および活動・固定・柔軟の性質を配し、その配置により万象を論ずるなり。たとへば牡羊宮は活動的なる火性、牡牛宮は不動なる地性、双児宮は柔軟なる風性と各々区分す。生まれし時に太陽の在する宮は個人の根柢を、月の在する宮はその情感を示すと説かる。

結び

今邦訳本を手に取り、古代占星術の叡智に触れる機会こそ貴重なり。原典は現代人にも啓示を与へ、宇宙と人間界を結ぶ理を思ふ契機と成す。さらには読み進めつつ、古人の思想に己が何を重ね見むかを考へんとす。いかなるにせよ、遠き昔と同様、星辰の声に耳を傾けざるべからずとの思ひを新たにする。

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