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【エドガー・アラン・ポー】短編「ペスト王」レビュー〜疫病が蔓延した隔離街での宴会

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エドガー・アラン・ポー氏の1835年9月発表の短編小説「ペスト王」" King Pest"の感想やレビュー。

気まま勝手号

ユニークなタイトルからも予想される期待通りの作品。スクーナー商船”気まま勝手号”の水夫二人がある夜、ロンドンの街に酒飲みに出陣する。自分たちが居酒屋”愉快な水夫”の隅っこのテーブルにいるのにふと気付いたとき、かれらはすでにべらぼうに酔っていた。

映画「ハング・オーバー」にせよ「ベリー・バッド・ウェディング」にせよ、お酒とドラッグで記憶も理性も無くしてしまうわけだが、この小説を書いたポーという天才作家も常習だったようである。名作のなかには薬物とアルコールの力で生み出されたかのようなものも見受けられる。

あらすじ

二人組は片っぽうはのっぽでガリガリのレッグス(脚長)といい、もう片っぽうはチビだが恐ろしくゴツゴツした体格のずんぐりしたヒュー・ターポーリンといった。この見るもおかしい凸凹コンビは居酒屋で手持ちの金がすっからかんなのを見てとるや、一目散に店を逃げ出した。

女主人が追いかけてくるのを振り切り、二人は聖アンドルー寺院の階段に通じる暗い小径を猛り狂ったジェット・コースターのように走っていた。酔いといたずら心で一杯になりながら、この時代の”ペスト”なる致死的な疫病の蔓延している一角にさしかかった。

これから先に進めば死刑に処せられる禁制の防御柵が立ちはだかったが、死の恐怖さえ強力な酒と運動でテンションが上がった水夫らを遮ることはできなかった。奇声をあげながら容赦無く柵を乗り越える。

悪魔の呼び声

もし二人がこれほど酔っていなかったら自分たちのいる界隈の不気味さで立ちすくんでしまったであろう。あたりには腐った死体が転がり悪臭に満ちており、賊に家財道具を荒らされた家々が暗闇に密集している。

路地はますます細くなりレッグスがつまずいて甲高い声をあげた折に、どこからかそれに応えるかのように悪魔のような叫び声が聞こえた。火のように興奮している二人の水夫は近くのドアを蹴破り中に乱入した。

ペスト王とその家来

かれらが入ったのは葬儀屋の店だった。なんとそこにテーブルを囲んで人間の頭蓋骨を酒杯代わりにして一杯やっている6人の奇妙な輩がいた。この人物たちこそ”ペスト王”とその臣下だった。

この高貴な集いに無遠慮にどっかと腰を下ろしたレッグスとヒューに対し、一同は不快の念を表明した。一度などは全員が一斉に立ち上がりかけ、先ほど聞いた悪魔の叫び声を発した。ではこの6名の奇抜な容貌について述べていきたい。

一人目「ペスト王」、背が高く上座に着いて頭には霊柩車の黒い羽飾りをし、人間の大腿骨を右手で振り回しながら指示を出している。二人目「ペスト女王」、背が王と同じくらい高いが水腫病の末期症状で体が樽のように膨れ、口が耳元まで裂けている。

三人目「アナペスト大公妃」、女王の寵愛を受けている若い娘、結核患者。全身で経帷子を優雅に纏っている。鼻が細長く唇まで垂れ下がり時々舌で鼻先を動かす。四人目「ペスティフェラス大公」、太り気味で痛風の老人。ぜいぜい息を切らし、両頬が膨れて肩まで垂れ下がり、葬式用のマントを着ている。

五人目「ペスティレンシャル公」、紳士。アルコール中毒の発作で滑稽なほど震えており、酒を全部飲まれないように顎と両腕を包帯で縛られている。耳が巨大で瓶の栓を抜く音に敏感に反応する。最後に六人目「テンペスト公」、この男は卒中に侵されていて新しい棺桶を着用しているため、椅子に45度の傾きで座っている。

コンパニオン

彼らはペスト王の政治について気高い演説を拝聴したあと、下賤の者の分際で高貴な宴の席に乱入した罰を申し渡された。それは1ガロンの混合ラム酒を飲むということだった。レッグスがもう飲めないとペスト王に対し断ると、王の怒りはさらに燃え上がった。

ヒュー・ターポーリンが進み出た。もし飲めなければ酒の大樽の中に投げ込まれて溺死させられる。しかしヒューは自信満々、余裕だった。だが彼の王を侮る無礼な言葉に全員が再び一斉に立ち上がり、ペスト女王が「反逆だ!」と叫ぶと彼を酒の樽の中に沈めた。

しばしの間ヒューの体は泡の混じった表面を浮き沈みしていた。レッグスは相棒の失敗を見ると奮起し、運命の大樽めがけて体当たりした。それは倒れ酒の洪水が床に溢れ出てきた。二人の水夫は「ペスト女王」と「アナペスト大公妃」の腰や手をひったくると、船目指して一目散に逃げ去った。

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