【イースター島】モアイ像と絶海の詩情──ラパ・ヌイに吹く古代の風

疑似学術地帯

【イースター島】モアイ像が佇む、孤高の神秘と詩の風景

ラパ・ヌイ──青い海に浮かぶ三角の孤島

南太平洋の果てに浮かぶ、小さな三角形の島──ラパ・ヌイ。一般には「イースター島」の名で知られるこの地は、かねてより私の憧れの場所のひとつだ。一度でいい、あのモアイたちをこの目で見てみたい。長方形の巨大な頭部、彫りの深い眼窩、張り出した顎──それぞれが特徴的な姿をして、青空を見上げながら地面に半ば埋もれている。まるで太古の巨人たちの亡骸が、地表から静かに語りかけてくるかのようだ。

「巨人」と聞けば、私はいつもギリシャ神話のタイタン族を連想する。そして、ウィリアム・ブレイクの詩が脳裏をよぎる。

“The Giants who formed this world into its sensual existence and now seem to live in it in chains;” ──『天国と地獄の結婚』より

この世界を感覚的存在へと形作り、いまは鎖に繋がれてしまった巨人たち──。その言葉は、ラノ・ララクの石切場に無造作に突き刺さるモアイや、海岸線のアフ(台座)に整列するモアイたちの姿と不思議と重なってくる。写真や映像でしか知らない光景なのに、夕暮れ時のその佇まいを想像するだけで胸が締め付けられるほどロマンチックだ。

ゲームに現れたモアイ

かつて少年だった私にとって、モアイ像との最初の接点は意外にもアーケードゲームだった。コナミの『グラディウス』──宇宙を駆ける戦闘機が、なぜかモアイから発射されるドーナツ状のビームを回避しながら進むという異色のステージ。当時リアルタイムでゲーセンでクリアしたが、その奇妙な演出にモアイの神秘性が奇妙に混ざり合って、いまでも妙に記憶に残っている。

絶海の孤島に吹く詩の風

イースター島は周囲2,000キロ以上に人の気配がない、まさに絶海の孤島。いつ誰がこの地に足を踏み入れたのか──その謎は完全には解明されていないが、ポリネシア人がカヌーで渡ってきたという説が有力とされている。古代ペルーから冒険者が漂流してきた、なんていう空想もロマンをかき立てる。

7〜8世紀頃には、島の人々はすでにモアイ像の制作を始めていた。その目的や機能については諸説あるが、「芸術作品に用途を問うな」と言いたい。どれほど重労働であっても、そこに愛があったからこそ、あれだけの巨像を創り続けることができたのだと思う。空を愛し、海を愛し、星を愛した者たち。風の音に耳を澄まし、波の調べを聴きながら石を彫った者たち。彼らの手によって生まれたモアイは、いまもなお島の詩的沈黙のなかで立ち続けている。

イースター島には、太古の叙情詩が風に乗って流れている。モアイ像たちはその韻律のなかで、巨人たちの永遠のため息を語り続けているのかもしれない。

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