【ホメロス】『オデュッセイア』あらすじと感想|冒険と幻想の原点を読む

詩煩悩

【ホメロス】『オデュッセイア』紹介|幻想と冒険の原型がここにある

ホメロス——紀元前8世紀頃に活躍したと伝えられる、古代ギリシャの伝説的詩人。その名を聞くだけで、「詩」という言葉が本来持っていた魔法のような響きを思い出させてくれる。現代では甘ったるいお菓子のように軽んじられがちな“詩”だが、ホメロスの作品を読むことで、言葉が語りとして命を持っていた時代の息吹を感じられる。

彼の代表作とされるのが、トロイア戦争を描いた『イーリアス』と、その後日譚である『オデュッセイア』。今回は後者、『オデュッセイア』の魅力に迫ってみよう。

詩人ホメロスとは?

ホメロスについては、同時代の詩人ヘシオドスの伝える「ホメロス伝」にその生涯の一端が語られている。それによると、彼は幼少より才能に恵まれていたものの、不運にも盲目となり、各地を放浪しながら物語を語って暮らしていたという。

『イーリアス』も『オデュッセイア』も、書物としてではなく、こうした口承の形で語り継がれてきたものであり、後に弟子や他者の手で文字に起こされたと言われている。つまり、これらの叙事詩は「読むもの」というより「語られるもの」だったのだ。

『オデュッセイア』概要

『オデュッセイア』は、トロイア戦争で木馬の策を考案した知将オデュッセウスの、帰郷をめぐる苦難と冒険を描く叙事詩である。内容的には『イーリアス』の後日譚にあたるため、できれば先に『イーリアス』を読んでおくと、物語の深みがいっそう感じられるはずだ。

ホメロスの文体は、まるで炉端で語られる昔話のように素朴だが、読者を引き込んで離さない力を持っている。岩波文庫版は読みやすく整えられており、小説を読む感覚でページをめくることができる。

あらすじ

物語は、ギリシャ神話(ヘシオドス『神統記』に通じる神々の世界)を背景に展開される。トロイア戦争を終えたアカイア勢は故郷を目指すが、オデュッセウスの船団はさまざまな苦難に巻き込まれ、故郷イタケーから遠く離れたままとなる。

その間、イタケーでは彼の死を信じた求婚者たちが王宮に入り込み、妃ペーネロペイアに言い寄りつつ家財を食い荒らしていた。息子テレマコスは、女神アテナの助言に従い、父の消息を求めて旅立つ。

一方、オデュッセウスは数々の怪異に遭遇する。キュクロープス(ポリュペーモス)と呼ばれる一つ目の巨人に仲間を食われながらも、機転を利かせて脱出。だがその巨人は海神ポセイドンの子であったため、神の怒りを買い、旅路はますます困難になる。

さらに太陽神ヘーリオスの神牛を殺してしまった部下たちの不敬により、彼らは神罰を受けて全滅。ひとり生き残ったオデュッセウスだけが、海をさまよい続けることになる。

そして帰還へ——まとめ

幾多の試練を経て、ようやく故郷イタケーに戻ったオデュッセウス。だがそこには無法者たちが居座り、王宮を我が物顔で荒らしていた。彼は乞食に変装し、忠実な豚飼いやテレマコスと共に策を練り、見事に求婚者たちを討ち果たす。

こうして物語は大団円を迎えるが、『オデュッセイア』には他にも数えきれない冒険や神々とのやり取りが詰め込まれている。今回紹介したのはほんの一部——たとえばセイレーンの誘惑や冥界訪問なども本来なら語りたかったが、それらを含めると5回連載にしても足りないほど。

この詩は、まさに幻想と冒険が織りなす“ファンタジー”の原点であり、あらゆる冒険物語の母胎である。これほどまでにスリリングで、豊穣な物語世界を持つ本は、いまだ他にない。

▼関連:ホメロス『イーリアス』あらすじ紹介〜英雄アキレウスとヘクトールの闘い

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