【Mandiargues】La Nuit séculaire「世紀の最後の夜」〜北欧の長い夜の大晦日

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マンディアルグ1979年発表未邦訳の戯曲「世紀の最後の夜」の紹介。

概説

前の記事であげた「アルセーヌとクレオパトラ」は悪く言えばあまりぱっとしない劇であるが、こっちは幻想小説家らしいかなりバロック(怪奇)な中身である。マンディアルグという人は非常に高潔で知識もあり、晩年には聖者を思わせる預言の境地に達しているように感じる。

例えば「全ては消えなん」「マロニエ」「海嘯」などがそうである。私の先入観かもしれないが、この戯曲の題名も預言的性格を帯びているように思われ、しかも当時「ノストラダムスの大予言」というものを信じ込んでいた筆者は直ちにこのタイトルを”人類最後の夜”と読み換えた。

「ノストラダムスの大予言」は73年に日本で日本人が出してブームを巻き起こした単行本であり、ノストラダムスの本ではない。心霊写真・超能力etc、昭和のオカルト・ブームがどれほどだったか同じ世代の人々はよく知っている。テレビでは大々的に1999年の人類滅亡を特集した。

つまり私は勝手に、1999年の人類滅亡最後の夜を、1899年と1900年の推移の晦日を扱って譬え的に預言した内容だろうと考えた。実際に読むと預言は出てきてもそういった類の中身ではなかったのだが。。

長い夜

1899年の12月31日の夜、ノルウェーの大都市ボードー。男爵夫人BARBROの家。2幕、登場人物8人;男爵夫人バルブロ、娘ロヴィーサ、3人の召使い女、3人のロシア海軍水夫。

男爵夫人は120才すなわち1779年生まれ、20才の時つまり1799年にアクセルなる男に拐われ、犯され娘を身籠もる。その娘ロヴィーサはよって99才で不具のため小さな車椅子に乗る。

ロヴィーサは劇中に老衰で死ぬ。遺体は水夫らによってスカンディナビア海域の暗黒の海に沈められる。しかし1幕の終わりで、死んだはずの娘は13才になって若く生き返り登場する。これは何をか意味するのか?

少女には預言能力があり、母親から与えてもらった玩具の揺れる白い木馬に乗って、未来に起こることを詩行形式で語る。マックス・ウォルターの誕生、タイタニック沈没などのほか、20世紀最後の年の出来事で締め括る。

”あなたは1999年の夏に、太陽の二重日蝕を見るでしょう。それ以後のことは私には何も見えないのです。”

ダブル・エクリプスという天文現象が実際にあるのか。ネットでは”an unusal 'double eclipse', where both Earth and the Moon cross in front of the Sun at the same time.とある。参考動画;SDO Witnesses A Double Eclipse

リベルテ

3人の召使い女の子は3人の水夫の情欲に供される。20世紀の幕が上がると同時に外では祝砲が鳴り響き、男爵夫人の命令で水夫らは女の子たちを寝室へと連れ去る。

男爵夫人バルブロ(Barbro)とは変な名前である。1つ綴を変えるとこコプト教の永遠者の英語名になるが、この役は「背が高くて痩せた男性により演ぜられる」との指示付き。120才で、体には一本の毛もなく、鼻と耳が削げおち仮面を被り一切の肌を現さない。まあ一種の化け物である。

バルブロが犯されて身ごもった時期はフランス革命に重なる。もし男爵夫人が原初の蛇であるサタンだとするならば、娘は「自由の女神」かもしれない。その最も巨大な胴像はアメリカ合衆国にある通り。

上の写真は「全ては消えなん」でメリエムが自殺したセーヌ河の小島を想起させはしないだろうか。

まとめ

娘ロヴィーサは13才のリルになって生き返るから、正確には登場人物は9人である。この娘の特徴は70才になると倒れて歩けなくなることだ。従って20世紀では1956〜57年に車椅子に乗る計算になるだろう。ちなみにその辺りは人類が初の人工衛星を打ち上げたなどの出来事がある。

劇の最終2幕にバルブロは自らの若返りを報告し、自らの不滅性を主張するのであった。すなわち現在我々が眺めている美しい女たちは、若くて新鮮なようで実は中身は年取った怪物なのであるという解釈になる。

彼女たちは過去の歴史上類を見ないような、身体を”自由”に用いる権利を得た。コルセットやキュロットやブラジャーを脱ぎ捨て身軽となり、水夫である男たちを虜にするのである。

【Mandiargues】Arsène et Cléopâtre〜戯曲「アルセーヌとクレオパトラ」紹介

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