ダンテ【神曲】まとめ(23)〜「煉獄篇」第31歌・第32歌・第33歌
ついにダンテは煉獄山の頂、地上楽園に到達する。だが待っていたのは、永遠の女性ベアトリーチェの厳しい糾弾だった──
第31歌:悔恨の涙とレテの水
地獄の入り口で彷徨っていたダンテを導いたのは、天の計らいによって派遣された師ヴェルギリウスだった。その導きによりここまで来られたのだ。
しかしベアトリーチェは容赦なかった。10年前にこの世を去った彼女との再会の喜びは束の間、現世での堕落と裏切りを厳しく咎められ、ダンテは激しく泣き崩れる。
気を失った彼は、天女マチルダに導かれて「レテの川」へ。慈悲深いその水は、ダンテの過去の罪を忘却させる。水を飲んだ彼は再び天女たちに抱かれ、ベアトリーチェのもとへと戻る。
そこで示されるのが、彼女の「第二の美」──つまり“微笑”である。少年時代、ダンテが最初に恋に落ちたあの笑顔が、今、天上の輝きを宿して現れるのだ。
第32歌:知識の樹と黙示の光景
ベアトリーチェの微笑はまるで太陽のようで、ダンテはその光に眼を灼かれそうになる。声に促されて視線を逸らすと、一行は一本の大樹へと進んでいく。
それはアダムとイブが禁を破り、楽園を追放された「知識の樹」だ。象徴的な光景が次々と現れ、まるでこの世の原罪と再生のすべてを映し出すかのようだった。
第33歌:エウノエと旅立ちの準備
最後の儀式が始まる。ベアトリーチェに導かれ、ダンテと詩人スタティウスは「エウノエ川」へと向かう。この水を飲むことで、善を想起する力が魂に満ちていく。
レテが過去を忘却させ、エウノエが未来を照らす。この二つの水を経て、ダンテの魂は天へと登る準備を整えた。
スタティウスはこの場で物語を終える。ヴェルギリウスの後を継ぎ、理性と信仰の象徴として、ダンテのそばにいた存在。彼が姿を消し、いよいよ次はベアトリーチェとふたりきりの旅が始まる。
不純物をすべて洗い流した今、ダンテの魂は、星々の世界へと昇るのだ。
まとめ:煉獄篇完結、そして天国へ
ここまで「煉獄篇」を読み進めていただき、感謝します。やはり最大の見どころはベアトリーチェとの再会と、それに伴う精神的浄化のドラマです。
次回からは「天国篇」へ。天国には地獄や煉獄のような劇的な苦しみはありません。物質的な舞台も消え、魂と光、言葉と愛のみが飛翔します。
だからこそ、読む者の精神もある種の“浮遊感”を求められることでしょう。果たしてこの「最も退屈な篇」をどう面白く読み解くか──それが次なる挑戦です。
*次の記事はこちら→ダンテ【神曲】まとめ(24)〜天国篇 第1〜3歌
◯まとめ記事はこちら→ダンテ【神曲】「天国篇」〜まとめのまとめ〜
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