【The fable 2】アベライーデ──翼の虫・糞と血・そして切腹

オリジナル

【ネット小説】第二回目: The fable〜title”アベライーデ・ベゴン・ティアマウーテッフェ”

蝙蝠

その名は”The Winged-Eye-Worm”──翼の生えた眼の虫。

夜の大気のなか、そいつはゆっくりと飛びながら、死後硬直した私の顔の前に蝙蝠さながら停止した。

これから私の「眼」の代わりを務める存在。それは、爬虫類じみた縦長の瞳をもつ眼球が、ミミズのような胴体の端にくっついた奇妙な生き物だった。両耳のように小さな翼が生え、後ろから見ると、まるでビーフジャーキーの塊のようだった。

そいつはテレパシーで語りかけてきた。

昨日という日は、昨日となったとき、大きな塊となる。 太陽が沈めば、お前は”昨日”の中に閉じ込められる。 そして無数の”昨日”が、お前を楽しませ、苦しめるだろう。

意識はあった。私は思った──「これは、エドガー・アラン・ポーの『大鴉』とはまた違う客だ。」

私は願った。「飛んでくれ、昨日へ。何を見、何が見えるか、語ってくれ。」

昨日

「おお、このクソッタレめ。」

Winged-Eye-Wormが吐き捨てる。「電柱の陰で小便をして何が悪い? 外道め。」

──私は覚えている。昨晩、慣れないバーで酒を呑み、ザ・ドアーズの『ハートに火をつけて』に酔いしれていたことを。

──そして、心惹かれた牝犬のような女が、結局私に股を開かなかったことを。

理想の女を求めていたんだろう。 だが彼女は、そうではなかった。ただそれだけだ。

怒りに燃えた。だが体は動かない。ただ、考えることだけができた。

「私は思い出の中にしか、理想の女を探せないのか。」

吸血鬼

Winged-Eye-Wormは続ける。

たとえ甘い思い出を与えようと、彼女らは吸血鬼だ。 男の血を吸うだけで、何も与えはしない。

私は怒りにまかせ、カジュアルショップで手に入れたステンレス製ナイフとメリケンサック一体型の凶器を思い描いた。

──いずれ誰かの頭蓋骨を砕くために。獲物が見つからないなら、車や住宅を壊してもいい。

──未成年が売春していようが、そんなことは知ったことではない。

そんな考えにふけるうち、便意を催した。自然な行為。小便も糞も、生命の証である。

私は”翼ある眼の虫”に尻を向け、生皮を剥がれる狸のような叫び声とともに、糞を捻り出した。 虫は飛び去ったが──きっと、また来るだろう。

松果腺

「何かがおかしい。」

満足してその場を去ろうとしたとき、違和感が私を襲った。ジグソーパズルのように噛み合わない世界。

そこへ、Winged-Eye-Wormが汚物を洗い流して舞い戻った。

言葉には二種類ある。真と偽だ。 地表の苔に夢中になり、眼をキョロキョロ動かす者たちよ。 自分たちが美しいとでも思っているのか? 本当に面白い種族だ。

血と骨と肉と臓物──それが人間の正体だ。 股間の匂いも、誰一人として隠すことはできない。

ソーセージのように、臓物を腸で包んだ生命体。それが人間である。

Winged-Eye-Wormは問うた。

お前は、真理を体現したか? 頭が裂けるほどの頭痛と嘔吐を経てなお、真理に至らんとする覚悟はあるか?

私は答えた。「殺したければ殺せ。真理なき100年の命など、意味はない。」

解剖学

Winged-Eye-Wormは語る。

女の身体を真っ二つに割ったなら、誰が欲情する? 松果腺から粘液を垂らし、大腸に糞便を抱え、蠢く小腸をもつ。 それが「美」と呼ばれる存在だ。

自分の身体と、地球、太陽系の運行を同時に見ることができれば── 人間は、自分が生きていることさえバカらしく思うだろう。

切腹

やがて、辺りを暗闇が包み、聖なる静寂が訪れた。

(日が暮れる。夜が来る。そしてまた夜明けが訪れる。)

『昼は永遠、夜は無窮』と古代エジプト人は謳った。

──あなた方の偉業は山であり、私の石ころは小さい。 だが、石ころもまた、山を構成する鉱物と同じ物質でできている。

女どもの踊る骨と肉に心を奪われるな。 男たちよ、知性を持て。地表の糞尿を美と錯覚するな。

私は二本のドスを抜き、腹に突き立てた。切腹である。

右手で鳩尾に刃を刺し、左膝に左手を添える。 命の息が胸から抜け、私は俯せに突っ伏した。

The Fable【第1章】アナーキー神話小説|ゼウス、牢獄、そしてドラゴンの黙示録

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