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映画【三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実】レビュー〜新型コロナウィルス・パンデミック時代に蘇る言霊

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まず筆者がどの程度三島由紀夫と作品についてかじっているか、以下のリンクで参照願いたい。その上でこの映画レビューを読む気になるかどうか決めていただいた方が良いと思う。

三島由紀夫作品レビューまとめ

上映が始まる前に筆者は神に罪の許しを乞うた。そして映画鑑賞後、再び罪の許しを乞うた。しかし過去に書いた物は書いた物として削除することはしなかった。それでは始めよう。

原作

この映画はドキュメンタリーだが原作のような本がある。新潮社「討論 三島由紀夫vs.東大全共闘―美と共同体と東大闘争」である。

音響が優れた劇場内で効果音や音楽が記録映像を盛り上げるものの、基本的にYoutubeでも観れる動画の寄せ集めである。そこへ新たに付け加えられる年齢を重ねた存命の当事者たちのインタビューが、ピリッとした刺激を加える。

影響

たとえどんな平凡な人でさえ死ねば、死んだという事実により、その人を知っていた人々のその人に繋がる記憶の中の、その人から受けた感覚を剥ぎ取るものである。蛇の脱皮のように。ましてや三島由紀夫と実際に触れ合ったこれらの登場人物たちは、いかほどの影響を氏の死から受けたであろうか。

どんなに氏の小説を読み漁ってわかったような批評をしたところで、実際に氏を知っていたわけでもないなら、氏について何を知ろうか?筆者もそんな中の一人に過ぎない。そう強く感じさせられた。反対に第三者のインタビュー、現代作家や社会学者などによる意見は同意せずに聞き流した。

時代

三島由紀夫氏は筆者がこの世に母の胎から外部に出て、一週間後に切腹した作家である。自分が生まれる前後の時代に興味があったし、一人が今まさに誕生したばかりの時に、一人が血まみれの死に様で幕を閉じたという事実に、全ての人間の誕生を司る者の摂理を感じるのである。

この映画で印象に残るのは唯一、芥正彦氏であろう。Youtubeで見るよりはるかに知的で、考え方もはっきりしていて実際に会ったら恐そうな爺さんである。いやもう一つ、討論会を主催した木村修氏は動画では七三の美男子だがお年を召され、三島から討論会後にかかってきた電話のエピソードを披露する。

このエピソードは深い意味を持つ内容なのでここでは明かさない。知りたい方は劇場に行ってもらいたい。

まとめ

新型コロナウィルスの影響で長らく劇場が閉まっていたが、地元の映画館で上映が開始され、予告編を観て我慢できなくなりさっそく出かけた。Youtubeと重複する内容が多いにも関わらずスリリングな編集が効いていて、有意義な体験のできる2時間弱であった。

映画は現代の我々に三島の言霊が問いかけるような演出で終わっている。氏は人間の形がなぜそうなのか一度も考えたことはなく、好き嫌いと言いはするが真実を追求はせず、自分がどう見えるか、勝つか負けるかにこだわった作家である。

氏がスーパースターだった、ということは十分伝わったが、結局筆者は特に新しいことを映画から学ぶことはなかった。視聴者の皆さんも、映画の中のたった数人のインタビューだけを聞いて、この映像だけを観て、三島由紀夫とその死について、わかったような気になることのないように願うのである。

和田克徳著【切腹】【切腹哲学】レビュー〜紹介・感想・考察

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