映画『ロイ・コーンの真実』感想レビュー|ドキュメンタリーという名のハリウッド映画
「ロイ・コーン」という名前を最近どこかで聞いた覚えがある人も多いだろう。そう、小熊慎司議員(立憲民主党)の”カツアゲ”動画に登場していたあの人物だ。
その元ネタになったドキュメンタリー映画『ロイ・コーンの真実』(2019)を、気になって90分一気見してしまった。普段ドキュメンタリーは自然系しか観ない筆者だが、本作はまるで法廷サスペンス映画のような濃密さ。
これは“政治プロパガンダ”としても観るべし
まず断っておきたいのは、この映画は完全に政治的プロパガンダの香りがする、という点。構成や語り口があまりに巧妙で、油断するとその”悪の権化”イメージに呑まれてしまう。小熊議員があのように動画を引用したのも、ある種“洗脳”された証なのかもしれない。
ちなみに問題のバズ動画はこちら:
『American Extortionists’: Japan Leader’s Roaring Speech Shocks Trump, U.S. Amid Tariff War』
(インドのニュースメディア「Times Of India」公式チャンネルより)
ロイ・コーンとは何者か?
ジョセフ・マッカーシー上院議員の右腕として「赤狩り」に加担し、後にはドナルド・トランプの”育ての親”とも言われる弁護士。FBI・政界・マフィアとの黒い関係にまみれた人物で、数々の著名人を法廷で叩き潰してきた。
その姿は、リアル・マイケル・ダグラス、あるいはハンニバル・レクターを彷彿とさせる。ギョロついた目と歪んだ口元、ねっとりとした話し方——まさに「悪役のテンプレート」。アンソニー・ホプキンスも影響を受けたのでは?と思わせる。
ロイ・コーンとは誰か?ドキュメンタリーとトランプとの関係から読むアメリカ政治の闇
だが、そこまで悪か?
映画は彼を「悪の化身」として描く。しかし観ているうちに筆者は少し疑問を抱いた。これ、本当にそこまでの極悪人か?
もちろん倫理的には決して称賛される人物ではない。だが、必要以上に“悪役としての演出”がなされており、視聴者の感情を巧妙に操作しようとする意図が感じられた。
もっと邪悪な人物なんて、我々の身近にもごろごろいるのではないか?
90分、まったく退屈しない
映像は当時のニュース映像・証言・再構成の編集が見事。スリリングなテンポで進み、途中で気を抜くヒマがない。
『スカーフェイス』『ゴッドファーザー』『陪審員』のような雰囲気すら漂う。ハリウッド級のドキュメント作品だった。
あらすじ
1950年代、若きロイ・コーンはマッカーシー議員とともに“赤狩り”で名を上げる。
彼は冷戦下のアメリカで、政治家・財界人・マフィア・メディアと深く関わりながら影響力を拡大。
法廷では容赦なく敵を潰し、弁護士としても恐れられる存在に。
その冷酷さと野心は、若き日のドナルド・トランプにも強い影響を与えた。
同性愛者でありながらエイズの存在を否定し続け、世を去るまで一切の自己否定を拒む。
ドキュメンタリーはこの男の栄光と没落、そして“アメリカの闇”を描き出す。
まとめ:洗脳されずに観れば、とても面白い
『ロイ・コーンの真実』は、冷静な距離感を持って観るなら非常に見応えのある作品だ。逆に言えば、政治的メッセージに流されやすい人は注意が必要。
少なくとも、小熊議員のように「ドヤ顔で引用する」前に、自分の頭で考えよう。
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