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映画【万引き家族】是枝裕和監督〜感想・レビュー 日本社会の底辺にあった幸福

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是枝裕和監督と言えば「誰も知らない」「海街diary」「そして父になる」「3度目の殺人」などの実績がある。海外の映画賞もかっさらう名手;この「万引き家族」もパルムドール獲得という凄腕監督。

題名からして内容がだいたい予想がつく;またこの監督さんはリリー・フランキーとの相性も良いようである。リリー・フランキーという人は本当に惨めったらしいおっさんをやらせたら最高の役者である。

評価

まずこの映画の評価だが、すごい作品だと言える。奇妙な・不思議な音楽の流れるさほど長くないエンドロールを最後まで見てしまう。その後も30分から1時間、呆然と余韻に浸る。眠って翌朝目を覚ましてもまだ余韻が残る。

数々の印象に残るシーンが思い起こされ、すぐもう一回観ようという気になる。内容を憶い出しながらはっとさせられたり、隠れた意味に気付かされる。という、こんな映画滅多にあるものではない。

是枝裕和市は監督・脚本・原案全て行なっているとエンドロールに出てくる。この人は芸術家か;”抉り出す”という表現があるけれども、この「万引き家族」は何かを”抉り出している”作品だ。

風俗

リリー・フランキーと言えば風俗の匂いがある。この映画でも風俗の仕事をしている女の子が出てくる。オナクラだか耳かきだかわからない店で働いているその子も家族なのだが、お亡くなりになった樹木 希林演ずるおばあちゃんの連れ子のようである。

家族の中で一番羽振りが良く見えるこの女とおばあちゃんは仲が良い。片や風俗の仕事だし片や年金をもらっている。しかしおばあちゃんはみんなで海に行った後死んでしまう。もちろんまともに埋葬なんてできない一家は年金をがめるためもあり、床下に遺体を遺棄する。

子供たち

クリーニング屋でパートしている主婦役の安藤サクラは、冒頭感じの悪い邪険なおばちゃんぽいのに、雨の日に久々にリリー・フランキーと交尾してから妙に色っぽくなる。ゆりちゃんという小さい女の子はどっかから拾ってきたようで実の子ではない。

他に子供は翔太と呼ばれる男の子が一人いるだけで、リリー・フランキーと一緒に組んで万引きする。題名からして万引きで生計を立てている万引きプロ家族かなと想像しがちだが、実際一家はたまに盗みや車上荒らしをするだけで完全に犯罪に頼っているわけではない。

リリー・フランキーが日雇いの現場仕事に行くシーンがあるが、これは労災保険金をゲットするためにわざと怪我しに行ったみたいである。

感想

この映画を観て感じるのは金が無くても人は、家族は幸せに楽しく暮らせるということである。まるで外国のスラムのような一般日本庶民のレベルからガタッと落ちた生活ぶりだが、一家はゴタゴタした古臭い家で肩に力を抜いて楽しく生きている。

逆にこちら側から見るとあちら側つまり”普通”の生活の方が不幸に見える程だ。体裁・将来・財産・習慣これらの当たり前の人々の関心や態度は、万引き一家と並べると何か取って着けたようなわざとらしさがある。

”がさアパートの幸福”とでも言おうか;この映画が”抉り出している”のは戦後日本の”堅苦しさ”ではないだろうか。そのように感じた、まずは1回目の鑑賞 😉 

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