疑似学術地帯

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 『般若心経』中村元訳(岩波文庫)を読む|“馬の耳に念仏”を超えて仏教の真意へ

【般若心経】中村元訳・岩波文庫より考察|“馬の耳に念仏”を超えて仏教の真意へ1. はじめに――「耳にしていたはずの経典」への目覚め「馬の耳に念仏」という諺は、仏教がいかに日本人の生活に浸透しているかを示す一方で、その教義がどれほど無意識のう...
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柿本人麻呂「ひむがしの野にかげろひの…」を読む|万葉和歌に宿る古代日本の宇宙観

【万葉集の宇宙観】柿本人麻呂「ひむがしの 野にかげろひの…」の空間詩学と文明認識1. はじめに──記憶の底に棲む和歌高校教育を通じて、日本人の多くはある和歌を知らぬうちに記憶している。ひむがしの 野にかげろひの 立つ見えてかへり見すれば 月...
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 清少納言『枕草子』第九段を読む|翁丸の島流しと宮廷社会における動物・秩序・赦免

【清少納言『枕草子』第九段】命婦のおとどと翁丸──平安貴族社会における動物・流罪・感情の制度化1. はじめに──「いとをかし」の倫理『枕草子』第九段に描かれる、猫と犬をめぐる一連の出来事は、現代の読者にとって非常に奇妙な読後感をもたらす。そ...
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 『枕草子』第八段を読む|中宮定子と清少納言の知と笑いが織りなす宮廷文化

【枕草子 第八段】大進生昌の邸にて|清少納言と中宮定子の〈知〉と〈笑い〉の宮廷文化1. はじめに──「枕草子」第八段の位置づけ『枕草子』第八段に収められたのは、清少納言が仕える中宮定子(藤原定子)とともに、大進・平生昌(だいじん・たいらのな...
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 『菅原道真』(王丸勇 著)レビュー|天神信仰と詩文にふれる知的入門書

【菅原道真】王丸勇・著|神と知のあわいに生きた詩人政治家を読むための入門書1. 書誌と著者──昭和的良書としての価値本書『菅原道真』(金剛出版、1980年)は、福岡を拠点に活動した精神医学者・王丸勇(おうまるいさむ)によって著された人物論的...
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ハギア・ソフィアの学術調査報告から見える宗教的変遷と建築的偉業【筑波大学調査団2001年報告レビュー】

報告集の背景と概要ハギア・ソフィア学術調査団(筑波大学を中心とする日本チーム)は1990年から現地調査を開始し、文部省科研費の助成を受けて継続的に建築調査を行ってきましたjstage.jst.go.jp。2001年3月20日の成果報告会に合...
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 【ニコラ・テスラ『秘密の告白』】天才発明家の思想と孤独──告白体で綴る未来の預言

【ニコラ・テスラ『秘密の告白』】成甲書房刊|天才発明家の思索を告白体から読むテスラと現代の連想:電気自動車と宇宙開発現代において「テスラ」と言えば、まず電気自動車のブランドや、イーロン・マスクの名が思い浮かぶ。筆者がその存在を知ったのは比較...
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【地磁気の逆転】アランナ・ミッチェル著|科学と人類文明の終焉を見通す知のエッセイ

チバニアンと地磁気の逆転光文社単行本『地磁気の逆転』は、現代の地球科学をめぐる関心に応える、科学ジャーナリズムの快著である。著者アランナ・ミッチェルは、一般読者を念頭におきつつも、科学的誠実さを保ちながら、地磁気という一見難解なテーマをみず...
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アタランテ・フギエンス第10図|火には火を、水銀には水銀を――同質加算と錬金術の教え

【ATALANTA FUGIENS】EMBLEMA X.――火には火を、水銀には水銀を与えよ。そうすれば君は満たされる"Da ignem igni, Mercurium Mercurio, et sufficit tibi."加算の法則この...
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アタランテ・フギエンス第9図|老いと若返りの寓意:露の家と果実の象徴解釈

【ATALANTA FUGIENS】EMBLEMA IX.――老爺を木と共に露の家に閉じ込めよ。その実を食べ、彼は若返る"Arborem cum fene conclude in rorida domo, et comedens de fr...